8月23日(日)2015明治安田生命J2リーグ第30節
大分トリニータ 1-3 セレッソ大阪 (18:03/大銀ド/10,229人)
試合写真・コメントなど
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 明治安田生命J2リーグ戦第30節、セレッソ大阪は大分トリニータとのアウェイ戦に挑み、今季2度目の逆転勝ち。2位のジュビロ磐田も勝利したため、両チームの勝点差は3のままだが、3位の東京ヴェルディが敗れたため、セレッソは順位を1つ上げて3位とした。

 最終的に勝利を掴んだ今節だが、セレッソにとって、試合の入りは苦しいものとなった。開始早々、大分にCKを与えると、2分にあっさり失点を喫してしまう。ゴール前の混戦から、一度は丹野研太が防ぐも、こぼれ球を三平和司に押し込まれた。
 その後もしばらくは落ち着かない展開となるも、嫌な流れを絶ち切ったのはパブロだった。10分、CKから関口訓充がニアに蹴ったボールをパブロが合わせ、セレッソが同点に追いついた。この得点により落ち着きを取り戻したセレッソは、パスワークから崩しにかかる場面も作るなど、次第に相手を押し込み始める。すると28分、再びCKから得点が生まれる。関口が今度はファーサイドに蹴ると、頭1つ抜け出した田代有三が合わせ、セレッソが勝ち越しに成功した。蹴った関口のキックの精度、合わせたパブロと田代の強さと高さが遺憾なく発揮された2得点ではあったが、この2つのCKは、どちらも、この試合で11試合ぶりの先発となった楠神順平が前線で粘り強いプレスから相手のミスを誘ったプレーが発端となっている。アウェイで相手に先制される苦しい流れをひっくり返した影の殊勲者が、楠神だとも言える。

 逆転で一気に試合の流れを掌握するかに思われたセレッソだが、その後は再び大分に攻勢を許してしまう。試合後にパウロ・アウトゥオリ監督も指摘した、「硬くて、グラウンダーのボールも不規則にイレギュラーで弾む」ピッチに適応できず、守備では浮き球の処理に苦しみ、攻撃でも思うようにつなげずミスも増えた。31分と47分には決定的なピンチも招いたが、前者は相手のシュートミスに、後者は丹野の好セーブに救われた。

「浮き球の処理を早くすること」「最終ラインは裏を取られないよう準備を早く」「カバーのポジショニングをしっかりと」。ハーフタイムにアウトゥオリ監督から主に守備での指示を受けて後半に臨んだセレッソは、「徐々に状況に合わせたサッカーができるようになった」(酒本憲幸)と、前半のバタついた感じは次第に消えていく。57分、楠神がトリッキーな突破からサイドをえぐってチャンスを作ると、70分には、丸橋祐介、パブロとつなぎ、パブロの折り返しを楠神が丁寧に合わせるも、ポストに弾かれた。
 3点目のチャンスを幾度か逃して迎えた75分、またしてもCKからゴールが生まれた。この試合、キックに抜群の冴えを見せた関口が、今度はニアでもファーでもなく、少し後ろで構えたノーマークの山口へピンポイントのキックを届けると、山口が振り抜いたシュートは相手DFに当たって微妙にコースも変わりながら、ゴールへ吸い込まれた。このビューティフルゴールは、「(今週の)ミーティングの時に、あそこ(バイタルエリア付近)が空いているとは言われていたので、とりあえず枠には持っていこうと思って蹴った」(山口)と、スカウティングが実を結んだものでもあった。この1点で勝負は決まった。以降の時間は、交代で入ったエジミウソンが何度か好機に絡みつつ、秋山大地が守備を締め、遠く大分まで駆け付けたセレッソサポーターに歓喜の瞬間を届けた。

「内容的には褒められたものではないし、先に失点したけど、その後はしっかり耐えて、3点ともセットプレーで取ることができた。こういう勝ち方ができたら強くなる」と話したのは田代。開始早々の失点、両チーム等しい条件とは言え、アウェイチームにとっては不慣れなピッチコンディション、さらにはJ3降格圏からの脱出を図る大分の意地、これら全てを跳ね除ける、タフでたくましい勝利を掴んでみせた。「下とも詰まってきているので、これからも、どの相手であろうと勝っていかないといけない」とキャプテンの山口も話すように、今後も息の抜けない昇格争いが続くことは間違いないが、8月を締めくくった連勝により、自動昇格への機運が再び高まりを見せ始めたことも事実だ。 

 最後に、この選手に触れておきたい。今節、CKから3アシストというすばらしい結果を残した関口だが、この日も試合終盤になっても落ちない運動量で、攻守にチームを支えた。試合2日前には、「僕は今季のこのチーム、このメンバーで昇格したい」と熱い気持ちを吐露していたが、普段から、年上・年下に関係なくイジり・イジられ、チーム内の雰囲気を良くしている彼が、現在のチームで果たしている役割は大きく、今後も力強く、昇格に向けて走るチームをけん引してくれるだろう。

文・小田尚史