9月20日(日)2015明治安田生命J2リーグ第32節
大宮アルディージャ 1-2 セレッソ大阪 (18:04/熊谷陸/14,410人)
試合写真・コメントなど
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 勝利した瞬間、アウェイスタンドを埋め尽くした大勢の桜色のサポーター席から、大きな歓声が沸き上がった。14,410人と、熊谷スポーツ文化公園陸上競技場での開催史上、最も観客が入った今節はスタジアム全体が素晴らしい雰囲気に包まれたが、セレッソ大阪のサポーターも、数でこそホームチームに及ばないものの、チームを後押しする声援の熱量では負けていなかった。首位をひた走る強敵・大宮アルディージャをアウェイで撃破。連勝を4に伸ばし、今節、愛媛FCに引き分けた2位・ジュビロ磐田との勝点差を『1』に縮めた。自動昇格につながる大きな1勝を、セレッソはチーム全体で掴み取った。

 開始6分、ムルジャの突破に対応した山下達也がかわされ、カバーに行った染谷悠太がムルジャを倒して警告を受けた。8分には、家長昭博の緩急織り交ぜた突破からのクロスでピンチも招いた。第2節 の対戦時には不在だった両者を中心に、やはり、大宮の攻撃は脅威だった。それでも、セレッソはこの時間帯をしのぐと、11分、最初のチャンスを得点に結び付けた。この試合、2試合ぶりの先発となった楠神順平がドリブルで相手2人をひきつけ、左サイドの丸橋祐介に展開すると、フリーでボールを受けた丸橋が、ゴール中央で相手DFの間にうまくポジションを取ったエジミウソンへ絶妙のクロスを届けた。このボールをエジミウソンがヘッドで合わせ、ネットを揺らした。「チームのみんなが喜んだ」(パブロ)、待望のエジミウソンの移籍後初ゴールで落ち着きを取り戻したセレッソは、以降の時間帯は守備での集中力が増した。泉澤仁の突破に対して5人で囲んで危機を防いだ20分のシーンに象徴されるように、大宮にチャンスらしいチャンスを作らせない。ところが、このまま1-0で折り返すかと思われた前半終了間際の45分、セレッソは相手の鮮やかなパスワークから左サイドを完ぺきに崩され、大宮に同点ゴールを与えてしまった。

 セレッソとしては嫌な流れで前半を終えると、後半開始から10分間、ホームの大歓声を背に、大宮が怒とうの攻撃を展開する。特に泉澤の突破にセレッソは手を焼き、酒本憲幸と関口訓充が挟んで何とか対応。49分には、エジミウソンに入ったボールを奪われ、カウンターを受けると、家長にあわや逆転ゴールを許しかけた場面もあった。それでも、前半同様、相手の時間帯をしのぐと、次第に盛り返す。55分、関口のクロスから放ったパブロのシュートはわずかにバーを越え、64分には今度はパブロが直接FKで大宮ゴールを脅かした。すると、歓喜の瞬間が訪れた。75分、山口蛍の正確なサイドチェンジを受けた丸橋がパブロとのワンツーでサイドを突破。そのままエジミウソンに向けてニアに放たれたクロスは、大宮の菊地光将のオウンゴールを誘った。1点目と同様、丸橋とエジミウソンのイメージがかみ合った見事な得点だった。再び1点をリードしたパウロ・アウトゥオリ監督の決断は早かった。79分に田中裕介を、81分に中澤聡太を立て続けに投入。5バックにして守備を固める選択を取ると、「後ろに余る人数も増えて守り易くなったし、中盤もハッキリ付けるようになった。パワープレー対策でもあったし、しっかり跳ね返せた」(山下)と、最後まで大宮に決定機を与えず守り切った。

 試合前、「勝ち切れるチームであることを証明したい。強いチームになった、ということを見せる試合にしたい。チームとしての挑戦になる」と話していたアウトゥオリ監督だが、敵地で見事にこの言葉を実証。“強いチーム”であることを示してみせた。今節は負傷により玉田圭司を、コンディション不良により田代有三を起用できない窮地でもあったが、エジミウソンが2得点に絡む活躍。窮地を窮地で終わらせず、現在の勢いをまざまざと見せつける結果となった。試合後、エジミウソンは、「ゴールは本当にうれしかった。まず、神様と家族に感謝したい。それに加えて、サポーター、チームメート、スタッフ、みんなが支えてくれて、信頼してくれたことに感謝したい」と述べ、続けて、先週の全体練習後の居残り練習の中で行ったクロスからのシュート練習にも言及。「(練習に付き合ってくれた)羽田憲司コーチを思い返した」と日々の練習の成果が結果につながったことも強調した。

 冒頭にも記した通り、今節は磐田が引き分けたため、2位・磐田と3位・セレッソとの勝点差は『1』に縮まった。次節にも自動昇格圏内へ。意気上がる状態となったが、丸橋はあくまで冷静に話す。「首位に勝ったことは大きい。でも、次の試合が大事になる。今年は、そういう試合で負けたり、引き分けたりすることが多い。気を引き締めて次の試合に向けて準備したい」。先を見過ぎることはない。まずは、中2日で行われる次節のホーム・水戸ホーリーホック戦。鈴木武蔵が加入して攻撃に迫力を増した難敵をしっかりと迎え撃つことに、照準を合わせた。

文・小田尚史

試合後のセレッソ選手コメント
試合後の大宮選手コメント
試合後のパウロ・アウトゥオリ監督(セレッソ)記者会見コメント
試合後の渋谷洋樹監督(大宮)記者会見コメント