9月27日(日)2015明治安田生命J2リーグ第34節
徳島ヴォルティス 1-1 セレッソ大阪 (16:04/鳴門大塚/7,988人)
試合写真・コメントなど
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 土壇場で追いつかれての引き分けとなった第33節・水戸ホーリーホック戦の記憶を払拭すべく臨んだアウェイでの徳島ヴォルティス戦だったが、今節もセレッソ大阪はリードした展開から相手に同点弾を許す形で1-1の引き分け。第32節には首位の大宮アルディージャを撃破して4連勝を果たしながら、その後の2試合連続ドローにより、2位・ジュビロ磐田との勝点差は5に広がってしまった。

 試合の入りは良かった。圧倒的に相手陣地で試合を進めると、3分に関口訓充がドリブルからファーストシュート。10分には、CKの流れから酒本憲幸が相手ゴールを脅かした。しかしその後、流れは次第に徳島へ傾く。その原因は、佐藤晃大とキム ジョンミンという高さのある2トップにボールを収められたこと。セレッソは、ツインタワー目がけて徹底してクロスや長いボールを入れてくる徳島の攻撃に後手を踏んだ。23分には、濱田武のミドルシュートが染谷悠太に当たってゴールに吸い込まれたが、ここはオフサイドの位置にいたキム ジョンミンがGKの視界を遮るコースに入って得点に関与したとみなされ、ノーゴールの判定に。徳島にとってはやや不運でもあり、セレッソは命拾いした格好となった。

  35分、ようやくセレッソもエジミウソンと田代有三の2トップにパブロと関口が絡んだ攻撃でチャンスを作ったが、エジミウソンのシュートはバーを越えた。徳島とは対照的に、セレッソは2トップを有効に生かせずにいたが、それでも前半終了間際、セレッソのもう1つの武器である1本のパスから立て続けに決定機を生む。45分、扇原貴宏からパブロへ通った決定機はエステバンに防がれるも、直後の45+3分、今度は染谷からパブロへ相手DFの裏を取った絶妙なパスが渡り、今度はパブロが相手GKの位置を見て冷静に決めた。試合前、「2トップが抑えられることもあると思う。そうなった時は1発で裏を取れるパスを出すことも必要」と話していた染谷の宣言どおりのアシストにより、苦しい展開ながらもセレッソは1点をリードして前半を終えることに成功した。

 後半、パウロ・アウトゥオリ監督は動いた。酒本に代えて中澤聡太を投入。システムも[3-4-1-2]に変更した。守備における徳島の2トップ対策であり、前からのプレスを強める狙いがあったが、この変更により、まず効果が表れたのは攻撃面だった。
 サイドから2トップの下にパブロがポジションを移したことで、徳島としては山口蛍の攻撃参加を誰が見るのかはっきりせず、50分には高い位置でボール奪取した山口から丸橋祐介にパスがつながり、セレッソは大きなチャンスを迎えた。セレッソとしては、徳島が変化に対応する前のこの時間帯で2点目を決めておきたかった。
 しかし、前半と同様に時間経過とともに流れは徳島へ。56分、57分とセレッソは連続して決定的なピンチを迎えたが、ここは丹野研太が続けて好セーブ。難を逃れた。それでも、その後もキム ジョンミンの突破に対して山下達也と関口が2人かがりで止めに入るなど、徳島の勢いを止めることができない。たまらずアウトゥオリ監督は橋本英郎を投入してバランスを整えにかかったが、直後に迎えた78分のCKで、徳島の冨田大介に決められた。

 試合終盤は、セレッソはJ1自動昇格、徳島はJ1昇格プレーオフ圏内へ。それぞれの目標のために勝点3を奪いに最後まで攻め立てるも、88分のセレッソに訪れた山下の決定機はエステバンがブロックし、94分に迎えた徳島の決定機は山口が長い距離を戻って懸命にクリアした。両者一歩も譲らぬ死闘に決定打は生まれず、結局、試合は1-1の痛み分けに終わった。

 試合前にポイントに挙げていた、攻撃面で2トップに収めてからの展開、さらには守備におけるロングボールへの対応とセカンドボール争い。このいずれもで、セレッソは徳島を下回るパフォーマンスを見せてしまった。「セレッソは背後とリスタートが甘いので狙っていた」という敵将の小林伸二監督が、「今持っている力を十分出して戦ってくれた」とチームを評価した一方で、「セレッソには、まだまだ勝ち切る、勝者のメンタルがない」とアウトゥオリ監督は渋い表情。
 今季最後の連戦。セレッソは上位追撃の狼煙を上げるはずが、自動昇格を狙う上で痛恨の2試合連続ドローを演じた。しかし、残り8試合。まだまだ自動昇格の可能性は残されている。「気持ちを一つにして、絶対に自動昇格できると信じてやっていきたい」。先制点を決めたパブロは顔を上げる。

 次節、セレッソは、勝点1差で4位に迫るアビスパ福岡との“決戦”を迎える(10/4<日>@ヤンマー)。福岡も、前線に高くて体を張れるFWがいて、中央の守備は固い。言わば、今節の徳島と似た特長を持つだけに、セレッソはこの試合で出た課題を今一度、精査する必要がある。そして、次節こそ、未来につながる勝点3を獲得しなければならない。

文・小田尚史