2月28日(日)2016明治安田生命J2リーグ第1節
FC町田ゼルビア 0-1 セレッソ大阪 (14:03/町田/10,112人)
試合写真・コメントなど
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 今季、J3から昇格してきたFC町田ゼルビアのホームに乗り込んで迎えた開幕戦。セレッソ大阪は、J3で力を培ってきた町田に苦しめられる時間帯も長かったが、後半に生まれた山村和也の移籍後初ゴールにより0-1で勝利。J1昇格が至上命題の今季を白星でスタートさせることに成功した。

 試合会場である町田市立陸上競技場には、町田のホームゲームとして歴代最多となる10,112人が詰めかけた。試合前から両チームへの期待感と熱気に包まれた一戦は、前半12分、FKから山下達也が決定機を迎えるも、町田GK高原寿康に阻まれる。以降、セレッソが守勢に回る時間帯が続いた。2トップのリカルド サントスと杉本健勇にボールが収まらず、後ろも押し上げることができないセレッソは、全体が次第に間延び。ソウザと山村のボランチコンビの役割も定まらず、中盤に空いたスペースを町田に使われてしまう。26分には立て続けにピンチを迎えたが、ここは守護神キム ジンヒョンが阻止。事なきを得た。それでも、セレッソは落ち着きを取り戻すことができず、前半終了間際にも、町田の谷澤達也と鈴木孝司にフリーでシュートを許してしまった。

 迎えた後半、悪い流れを変えるべく大熊清監督が動いた。前半は右サイドで守備に忙殺されていた柿谷曜一朗をトップ下に、2トップの一角を担っていた杉本を右サイドに配置すると、次第にセレッソの攻撃にもリズムが生まれる。
 56分、柿谷のドリブルからブルーノ メネゲウ、杉本とつながり、杉本が放ったシュートが町田ゴールを脅かすと、65分には柿谷のパスからメネゲウが決めたかに思われたが、ここはオフサイドの判定。
 直後、待望の先制点が生まれた。71分、CKからメネゲウがアウトスイングで蹴ったボールに合わせたのは山村。脅威のジャンプ力で相手DFに完全に競り勝った背番号24が豪快にネットを揺らしてみせた。どうしても欲しかった先制点を手にした瞬間、敵地に詰めかけた大勢のサポーターで埋まったアウェイゴール裏が一斉に歓喜に包まれた。

 得点後は落ち着きを取り戻したセレッソ。80分には、町田市にほど近い多摩市出身の関口訓充が交代で入って試合を引き締め、試合終盤に町田が長身FWの戸島章を入れてくると、セレッソもすかさず中澤聡太を投入して対応。「去年は最後の時間帯で足が止まってやられていたこともあった。そういう意味では、今日は、あとから入ってきた選手も含めて最後まで非常に集中していた」と指揮官も称えるなど、セレッソは最後まで集中力を切らすことなく、0-1で勝ち切った。

 試合全体を見ると、先発11人中7人が新加入選手のセレッソはまだまだ完成形には程遠く、攻守に課題も残ったが、なにより大事な勝点3を掴むことには成功した。キャプテンマークを巻いて味方とコミュニケーションを取り続け、攻守に奮闘した柿谷も、「ホームの町田は思い切ったプレーをたくさんしてきたけど、セレッソも守備陣を中心に全員で耐え抜いて、1つの目的に向かって戦うことができた。これから数多くの試合がある中で、こういう試合も増えると思うけど、勝ち切ることが必要。どれだけいいサッカーをしても、負けたらダメ。いいサッカーをして勝つことが最高だけど、自分たちは何があっても勝つことが必要」と話した。

 値千金の決勝点を決めた山村自身、「守備の選手が耐えてくれていたので、点を取ることができて、勝てたことは良かった」と安堵の表情を見せつつも、「試合内容を見ると、納得のいく結果ではなかったし、改善するところはたくさんあった。そういうところはしっかり見つめ直して、次につなげていかないといけない」と、勝利にも浮かれることなく引き締めた。
 
 やはり、J2は甘くない。改めて実感したそんな思いと共に、勝利でシーズンをスタートさせることができた安堵感に胸をなでおろす。セレッソにとって、そんな2つの思いが交錯する町田との開幕戦となった。

文・小田尚史