6月8日(水)2016明治安田生命J2リーグ第17節
V・ファーレン長崎 1-2 セレッソ大阪 (19:03/長崎県立/6,342人)
試合写真・コメントなど
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 開始1分。柿谷曜一朗が前を向いてドリブルを開始すると、マークに来たV・ファーレン長崎の選手の足がかかり、柿谷は着地時に右足首を捻って転倒。担架に乗せられピッチを退くと、以降はプレー続行不可能となった。予期せぬアクシデントに見舞われたセレッソだが、選手たちは動揺することなくボールを握って試合を支配すると、13分、松田陸のクロスに頭で合わせたのは、柿谷に代わって投入されたリカルド サントス。ここ2試合は先発から外れ、出場機会もなかったリカルド サントスの10試合ぶりのゴールでセレッソが前節に続いて先制に成功した。

 その後も守備に緩さの見られる長崎を攻め立て、チャンスを量産するも2点目が遠い。23分にはブルーノ メネゲウが抜け出して長崎GK大久保択生と1対1を迎えたが、コントロールに失敗してボールが流れたところを防がれる。28分にもリカルド サントスがGKとの1対1を迎えかけたが、トラップがわずかに乱れてGKに距離を詰められた。39分には、松田、リカルド サントス、清原翔平、ソウザとテンポ良くパスがつながり、最後はソウザがミドルシュートを放つも、わずかにポスト横に逸れ、42分にも丸橋祐介の鋭い突破からのクロスに杉本健勇がヘッドで合わせるも、この決定機もGKに防がれた。

 再三の決定機を逃したツケは、後半に回ってきた。とは言え、後半も開始から10分間は前半と同じくセレッソがいいリズムで試合を運び、52分には丸橋のFKから抜け出したブルーノ メネゲウのシュートがポストを叩く場面もあった。
 しかし、次第に運動量が落ち始めたセレッソは、55分過ぎから流れを長崎に渡すと、守勢に回る時間帯が続く。前線に人数をかけてきた長崎のプレスも強まり、セレッソはパス回しがおぼつかない状況に置かれる。長いボールを前線に入れるもキープできず、セカンドボールを拾われる悪循環。それでも、田中裕介や山下達也の奮闘で最後の場面はしのぐも、前節と同様、後半に相手に傾いた流れを引き戻すことができないまま時間は経過した。

 65分には大学卒ルーキー・木本恭生が投入されたが、木本にとっては今節が初のJ2でのプレー。「始めはあまり試合に入れなかった」と試合後に本人も振り返ったように、流れを引き寄せるプレーを見せるには至らない。
 決定的なピンチこそないものの、セレッソのディフェンスラインが深くまで下げられる状況で迎えた90+2分だった。この試合の主役である永井龍の右足が火を噴いた。梶川諒太のクロスにダイレクトで合わせた永井の巧みなシュートがゴールに突き刺さり、セレッソは土壇場で同点に追いつかれた。咆哮する永井を中心に喜びを爆発させたホームチームだが、セレッソもあきらめない。直後の90+4分。リカルド サントスのクロスを清原がヘッドで折り返すと、詰めたのは木本。ダイレクトで冷静にゴールに流し込むと、今度はアウェイチームが歓喜に包まれた。
「点を取ると、こういう感じなんだ(笑)」。無我夢中で決めた劇的なプロ初ゴールの感想をそう話した木本の一撃で、前節のカマタマーレ讃岐戦とは真逆の展開でセレッソが勝点3を獲得した。

「今は結果が必要。よく最後は頑張った」
険しくも安堵の表情を浮かべた大熊清監督だが、リードした状況での試合運びには今節も課題が残った。また、主将でありチーム得点王の柿谷の負傷も気がかりだ。試合後の会見では大熊監督も、「1週間やそこらで(治るケガでは)ないのかなと思う…」と顔をしかめた。軽傷を祈りつつ、今は検査結果を待ちたい。それでも、今季の開幕時にはJ3が主戦場だった清原や木本といった新戦力の活躍は明るい材料であり、「曜一朗が早く戻って来られるように祈りたい。ただ、曜一朗が試合に出ても出なくても、自分たちは強いチームにならないといけない」(リカルド サントス)ことも確かだ。課題にも目を向けつつ、次節以降もチーム全員でチームの力を高めていきたい。

 最後に、やはり今節はこの男にも触れておきたい。
「中学生の頃からお世話になってきたピンクのユニフォームと対戦する時、自分が舞い上がっているのか落ち着いているのか、どんなプレーをしているのか…想像がつかない。でも個人的に特別な感情もあるけど、今は長崎の選手として、戦って勝ちたいという気持ちが本当に強い」と試合前に話すなど、今節を並々ならぬ思いで迎えた永井だ。ビハインドの状況でも決してあきらめることなくプレスを怠らない姿勢は彼の真骨頂。後半アディショナルタイムには、一時はセレッソを絶望の淵に追い込むすばらしいシュートも決めた。長崎のエースとして。第31節(9/11・日・キックオフ未定)にキンチョウスタジアムで迎えるセレッソホームでの対戦も心待ちにしたい。

文・小田尚史