7月31日(日)2016明治安田生命J2リーグ第26節
京都サンガF.C. 3-3 セレッソ大阪 (18:05/西京極/12,042人)
試合写真・コメントなど
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 丸橋祐介と田中裕介の2人を累積警告の出場停止で欠いた今節の京都サンガF.C.戦。セレッソ大阪は、試合に向けた紅白戦で左サイドバックに入っていた藤本康太も、「無理すればできる状態だったのかもしれないが、1試合を通してできる状態ではない、と。本人も『迷惑をかけたくない』ということで、彼の意見も含めて最終的に判断して、今日のメンバーから外した」(大熊清監督)とコンディションが万全ではなく、メンバー外に。最終的にピッチに並んだのは、山下達也、山村和也、茂庭照幸の3バック、関口訓充を左ウィングバック、松田陸を右ウィングバックに、ソウザと山口蛍のダブルボランチ、リカルド サントスを1トップに杉本健勇と清原翔平がシャドーに入る[3-4-2-1]となった。もっとも、この形も紅白戦では試しており、「選択肢の1つ」(大熊監督)の布陣ではあった。

 今季初となった3バックシステムだが、前半から試合の主導権を握ったのはセレッソ。ここ数試合、圧倒的な存在感を示している杉本が起点となり、そこへ関口が運動量豊富に絡む形で左サイドからチャンスを作る。20分には杉本のクロスに逆サイドから飛び込んだ松田が決定機を迎えたが、このヘディングは京都GK菅野孝憲に防がれた。
 26分には清原のスルーパスに抜け出したリカルド サントスが相手DFともつれるようにしてペナルティーエリア内で倒れたが、笛は鳴らず。31分にもセレッソに決定機。山口のサイドチェンジを受けた松田がクロス。中で待ち構えた杉本がボレーで狙うも、惜しくも枠を外れた。両サイドを幅広く使いながら試合を優位に進めたセレッソは、守備でも前半は京都にチャンスらしいチャンスを与えず、上々の内容で前半を終えた。

 後半も最初に決定機を掴んだのはセレッソ。53分、前線でリカルド サントスが相手DFに競り勝ちキープ。後ろから走り込んできた杉本にパスを送ると、杉本は菅野との1対1に。しかし、判断よく飛び出してきた菅野の前に、杉本は決め切ることができない。
 すると57分、セレッソにアクシデントが発生する。京都のカウンターに対処した清原と山口がピッチで激突。地面に叩きつけられる形で倒れた清原にダメージが大きく、以降はプレー続行が不可能となる。4分ほど試合が中断すると、再開後の63分、セレッソは山村のパスミスから京都にCKを与え、このCKから失点。さらに2分後、リカルド サントスのパスが逸れたところを、先制点を決めた菅沼駿哉が見逃さず、ダイレクトで前線へパス。対応した茂庭がエスクデロ競飛王に競り負け、GKキム ジンヒョンの頭上を抜くシュートを決められた。
 負の連鎖は止まらない。2失点目から2分後。今度は京都のスローインの流れからセレッソの右サイドをイ ヨンジェに突破されると、中でクロスを受けた堀米勇輝のシュートこそキム ジンヒョンが防ぐも、こぼれたところを山瀬功治に詰められた。
 セレッソとしては悪夢の4分間。「守備でいいポジションを取ることが重要。チャレンジ&カバーをしっかりやって、基本にもう一度立ち返ることが大切」(大熊監督)と守備の修正を課題に掲げて今節に臨んだセレッソだが、課題を克服するどころか、直近2試合で喫した失点の形が凝縮された3失点。同じことを繰り返してしまった。

 しかし、この気持ちが折れそうな展開にも、セレッソは最後まで諦めなかった。
 75分、途中出場の玉田圭司のCKから山下が決めて1点を返すと、1分後には2点目が入る。山口の縦への強いメッセージが込められたパスが右サイドの酒本憲幸に通ると、受けた酒本も同じく縦へのメッセージ性が強いクサビのパスを杉本へ送る。反転して前を向いた杉本は、DFを1人かわして左足ですばらしいコースへ強烈なミドルシュートを決めた。
 こうして1点差に迫った後、セレッソはいくつか決定的なピンチも招いたが、キム ジンヒョンの好守でしのぐ。迎えた90+4分。この時間帯は前線で張っていた山村へ山口が正確なパスを送ると、山村がヘディングで競り勝ち、右サイドの高い位置にポジションを取っていた酒本へ絶妙に落とす。受けた酒本の狙いすましたクロスに杉本が豪快なヘッドで合わせて、セレッソが土壇場で3-3に追いついた。
 劇的な同点劇の主役は2得点の杉本だが、影の主役は今季トップチームでは初出場となった酒本。3点をリードされた74分に投入されると、攻撃の推進力を一気に高め、2アシストを決めた。「ここまで今季はあまり出番もないなか、自分の思ったところにボールを蹴ることができたことは気持ち良かった。やっぱりサッカーはおもしろいなと思いました」。勝利には届かず、満面の笑顔とまでは行かずとも、試合後は滴る汗を気持ち良さそうに拭った。

 期待の新外国籍選手、ベサルト アブドゥラヒミのJリーグデビューも含め、「後から出た選手が仕事をしてくれた」(大熊監督)総力戦の結果、セレッソは辛くも3連敗は免れたが、今節も勝利した首位・北海道コンサドーレ札幌の背中はさらに遠ざかり、4位・ファジアーノ岡山にも勝点差を詰められた。守備の課題は持ち越しとなり、負傷で途中交代した清原の状態も気がかりだ。それでも、ゴールのたびに雄叫びを上げてチームを引っ張った杉本を中心に見せたセレッソらしい攻撃性にあふれた同点劇を、ホームで行われる次節の横浜FC戦へ、必ずや繋げなければならない。

文・小田尚史