8月11日(木・祝)2016明治安田生命J2リーグ第28節
レノファ山口FC 0-2 セレッソ大阪 (19:04/維新公園/14,532人)
試合写真・コメントなど
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 今年から制定された「山の日」による祝日に行われたレノファ山口FCとの一戦。維新百年記念公園陸上競技場に集まった観客数14,532人は、山口のクラブ史上最多となった。また、山口市内の最高気温も37.8度と今年最高を観測。キックオフ時も35度近い気温を記録していた。そんな会場全体の熱や、暑さとの戦いともなったセレッソ大阪だが、未勝利が続いた直近4試合の課題でもあった守備を修正するとともに、カウンターから2得点を奪って快勝。ファジアーノ岡山を抜いて3位に浮上した。

 試合後、多くの選手が「今日は割り切ったなかでの戦いとなった」と振り返ったように、セレッソは山口のパスサッカーをリスペクトした上で、しっかりと守備から試合に入った。左から山下達也、茂庭照幸、田中裕介と並んだ3バックがしっかりと中を締めるだけでなく、サイドのスペースも丸橋祐介と松田陸が埋めて対応。ホームで山口と対戦した第13節 では山口の右サイドバック小池龍太に裏を取られて先制点を許したが、その反省をチームとして生かし、対面した丸橋は山下との連係も含めてポジショニングに細心の注意を払った。

 すると8分、セレッソが先制に成功する。GKキム ジンヒョンの蹴ったゴールキックの流れから、杉本健勇が頭で競り勝ち、玉田圭司が相手DFと競り合い、DFのクリアを拾った関口訓充がループ気味にゴールに流し込んだ。試合2日前の9日。紅白戦で3バックが試され、今節に向けてある程度守備を固めた上での戦いになることが想定された練習後、2シャドーの一角に入った関口はこう話していた。「相手にボールを持たれる時間は長くなったとしても、カウンターの怖さは常に与えたい。できれば最初のプレーからそんなカウンターを出したい」と。関口の有言実行となる今季初ゴールが決まり、守備から入ってカウンターで追加点を狙うセレッソの戦い方はより明確になった。

 以降の時間帯もボール支配は山口に譲るも、セレッソは最後の局面では守備陣が体を張って相手にシュートを打たせない。攻撃はカウンターが中心となるなか、26分には、右サイドに流れた杉本へ松田からパスが渡り、杉本が中央へ折り返すと、この試合、1トップで先発した玉田が相手DFを背負いながら反転してシュート。GKに防がれるも得点に迫った。この日は集中力が途切れないセレッソは、山口のカウンターに対する戻りも早かった。45+1分には、自軍のCKから相手にカウンターを受けてピンチになりかけるも、松田が全速力でカバーに戻り、事なきを得る場面もあった。

 狙い通りの前半を経て、後半は立て続けにCKを獲得するなど相手を押し込んだなかでの立ち上がりとなる。守備での集中力も持続。後半の中盤の時間帯にはバイタルエリアが空き始め、相手にペナルティーエリア外からシュートを連続して打たれる場面もあったが、「最後までしっかり体を寄せる」(茂庭)ことで、シュートは枠外に飛んだ。1度だけ、76分に中央を破られ決定的なピンチも招いたが、抜け出した岡本英也のシュートはキム ジンヒョンがストップ。ゴールを割らせなかった。
 待望の追加点は86分に訪れた。守備から攻撃に切り替わった瞬間、途中出場の酒本憲幸がゴール中央から右サイドのスペースへジャンピングボレーパス。このアクロバティックなパスが右サイドの杉本へピタリと通ると、杉本の狙いすましたクロスにニアへ飛び込んできた山口が右足ヒールで合わせてゴールネットを揺らした。

 この芸術的な得点で勝利を決定付けたセレッソは、90分には山口にゴール前で決定的なシュートを打たれかけるも、この場面でも最後は田中が体を寄せることで、シュートはバーを越えた。今節を迎えるまで、直近4試合勝ちなし、4試合連続複数失点、前節の横浜FC戦ではホームで2-0からの逆転負けと苦しい状況に置かれていたセレッソだが、今節は「勝ちにこだわって」(藤本康太)なりふり構わず 5試合ぶりの勝点3をもぎ取った。3バックの真ん中で何度も相手を跳ね返した茂庭も、「今日は少し重心を下げつつ、ある程度相手を引き込んだなかで、カウンターがうまく決まった」と試合を振り返った。

 もっとも、チームは息つく間もなく、中2日で大一番を迎える。「集中力を90分出せたことが良かった。無失点で終われたことは価値がある。ただ、まだ1試合勝っただけ。次の松本戦に勝ってこそ、意味のある勝利になる」と山口蛍が気を引き締めれば、後ろからチームを支えたキム ジンヒョンも、「今日、無失点で勝てたことはうれしいけど、自分たちはまだ余裕はありません。ここ4試合勝てていなかったので、それを取り戻すためには、もっともっと勝たないといけません」と、この日の笑顔は最小限に留めた。

 ホームで迎える次節・松本山雅FC戦(8/14・日、19:00、キンチョウスタジアム)の重要性を、誰もが理解している。「1試合1試合、全力を出し切って戦いたい。それが我々に問われています。体を休めて、切り替えて、次の試合へ準備したいと思います」と大熊清監督は試合後に話した。この日、5試合ぶりに取り戻した守備での集中力を継続させ、次節、自動昇格争いのライバル・松本を必ずや撃破する。勝利の余韻に浸ることなく、セレッソの闘志は次節に向けられていた。

文・小田尚史