8月14日(日)2016明治安田生命J2リーグ第29節
セレッソ大阪 0-1 松本山雅FC (19:45/金鳥スタ/13,593人)
試合写真・コメントなど
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 2016明治安田生命J2リーグ第29節は、真夏にやってきた一大決戦。第28節にてレノファ山口FCとのアウェイ戦を2-0と勝ち切り、5試合ぶりの白星で再び3位となったセレッソ大阪が、ホーム・キンチョウスタジアムに迎え撃ったのは、勝点2差で追う2位の松本山雅FC。勝てば順位を入れ替え、J1自動昇格圏内の2位に浮上できることもあって、セレッソにとっては『最重要』の、絶対に勝利が必要な試合でもあった。

 酷暑が続く8月に中3日で行った前節、そこから再びわずか中2日というタイトな日程での第29節となったJ2だが、セレッソの先発は累積警告での出場停止が解けたソウザが新たに加わった以外は、最前線に玉田圭司、最終ラインの中央に茂庭照幸が入るなど、前節と変わらず。一方の松本は前節のFC岐阜戦から先発を5人入れ替え、約2000人にものぼる緑の大サポーターとともにアウェイの地に満を持して乗り込んできた。

 スタジアムでの雷の影響で、試合前には観衆に屋根のあるところへの避難指示が発令されたこともあり、試合開始時間が45分遅れの19:45に変更。それでも、天候も持ち直し無事にキックオフされた一戦では、13,593人の観衆でほぼスタジアムが埋まり、上位対決らしい緊迫感漂う雰囲気が作られた。
 試合は、前半から拮抗する展開となる。松本に得意のセットプレーで攻め立てられるシーンも見られたが、桜の守備陣もしっかり対抗。セレッソも、玉田、関口訓充、杉本健勇の攻撃陣が絡んだ形や、田中裕介のオーバーラップなどで好機も作っていく。

 しかし、試合の鍵となる大事な先制点を、一瞬の隙から松本に献上してしまう。42分、自陣ペナルティーエリア手前付近で、松本MFパウリーニョにボールをカットされると、そのままグラウンダーのミドルシュートを叩き込まれた。堅守を特長とする松本に主導権を握られたことで、セレッソは劣勢を余儀なくされ、前半を0-1で折り返す。

 そこで後半開始から、セレッソが動く。最近の試合で流れを変えるチャンスメーカーとなっている酒本憲幸を、攻撃的な位置で今季ホームゲーム初投入。布陣も3バックから4バック、前線も2トップにして攻めに出る。さらに、67分にはベサルト アブドゥラヒミ、68分には澤上竜二と、アタッカー陣を立て続けに送り込んだセレッソ。約20分を残したなか、交代枠を全て使い切って勝負に出た。

 逆に松本のカウンターなどでピンチもあったが、GKキム ジンヒョンの気迫あふれる好守でしのぐなど、追加点は与えなかったセレッソ。ただし、70分に杉本、74分に玉田が合わせたシュートはわずかに枠をとらえ切れず。そして、82分には山口にこの日最大のシュートチャンスが訪れるも、松本GKシュミット ダニエルのビッグセーブに阻まれ、1点が遠い。
 結局、「引いた相手からいかに点を取るか」「どう攻略するか」という課題を残したまま、最後まで松本の分厚い壁に跳ね返されたセレッソは、この大事な一戦を0-1と敗北。2位・松本との勝点差が5に広がっただけでなく、再びファジアーノ岡山に抜かれて4位に後退。気づけば、5位・京都サンガF.C.とは勝点1差、6位・清水エスパルスとも勝点3差に詰められてしまった。 

「夏をいかに乗り切るか」をテーマとしていたなか、7月、8月という夏場のホームゲームは、1分3敗と勝てず。その結果が現状に響いているのは明らかだ。この松本戦でも、最後までその声で、拍手で、後押してくれた、ホームに集った数多くの桜色のサポーターの思いに応えることができず。「(サポーターは)ほんまにありがたい。でも、申し訳ないです…負けたら」と酒本も悔やむように、ホームの利を生かせないことが、なんとも歯がゆい。それでも、「なんとかもう1回這い上がっていって、自動昇格圏をもう1回つかみ取りたい」(酒本)。まだここで終わりではない。あと13試合、セレッソには逆転でのJ1自動昇格圏内入りの可能性も残されている。だからこそ、「ここで本当に気持ちが落ちたら、終わると思うので。絶対にそれだけはダメ。気持ちを切らさずにやっていきたい」(杉本)。この苦しいときこそ、チーム一丸となって立て直していきたい。

文・前田敏勝