8月21日(日)2016明治安田生命J2リーグ第30節
ツエーゲン金沢 1-3 セレッソ大阪 (18:04/石川西部/9,316人)
試合写真・コメントなど
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 前節は、2位・松本山雅FCとの大一番に敗れたセレッソ大阪。仕切り直しとなる今節は、ツエーゲン金沢のホームに乗り込んでの一戦となった。システムは、前々節のレノファ山口FC戦から続けている3-4-2-1。メンバーは、松本戦から2人変更。ボランチをソウザから山村和也に戻し、2シャドーの一角として、今季トップチームでは初先発となる酒本憲幸が起用された。

 試合の入りで緩さが見られたセレッソは、11分に右サイドを破られ、クロスのクリアボールをそのまま相手に押し込まれかける場面も見られるなど、ピリッとしない。それでも、序盤の相手の時間帯を無失点でしのいだことで、徐々にセレッソにもチャンスが訪れる。
 19分、裏に抜け出した山村が華麗な個人技から放ったシュートこそGKに防がれるも、24分、右サイドで酒本がキープすると、裏へ走り込んだ松田陸へパス。松田のクロスを杉本健勇が頭でそらすと、丸橋祐介が左足でダイレクト一閃。鋭い弾道がゴール右隅に突き刺さるビューティフルゴールにより、セレッソが先制に成功した。丸橋にとっては、2014年8月以来、736日ぶりとなるゴール。J2では自身初となるゴールでチームに流れを呼び込んだ。得点後は落ち着きを取り戻したセレッソだが、それでも37分には金沢の右サイドバック小柳達司の攻撃参加から最後は山崎雅人にフリーでシュートを打たれるなど、ヒヤリとするシーンもあった。

 後半は、前半とは一転、アグレッシブに試合に入ったセレッソ。47分には玉田圭司のフリーキックを田中裕介が折り返し、茂庭照幸が惜しいシュートを放つ場面もあった。前線からの守備で酒本の頑張りも目立つなど、セレッソは試合を掌握して時間を進めたが、今季最多の9,316人が来場した金沢もこのままでは終われないと反撃開始。セレッソに劣勢の時間帯が訪れる。59分、金沢の最終ラインから簡単に縦パスを通され、続けて熊谷アンドリューに、茂庭のカバーも届かない絶妙なコースにスルーパスを通される。飛び出したキム ジンヒョンと山崎が交錯しそうになりつつ、どちらも触れなかったボールはそのまま転々とゴールへ向かう。同点も覚悟したが、ボールはわずかにポストを外れた。セレッソとしては肝を冷やすシーンだったが、61分にも続けてピンチ。前線に抜け出したダビにシュートまで持って行かれたが、ここはキム ジンヒョンがセーブした。73分には中美慶哉に鋭いシュートも浴びるなど、この時間帯は再三、ゴールに迫られたセレッソだが、前半の立ち上がりと同様、ここも無失点でしのぐと、直後に追加点が生まれた。
 73分、松田のクロスに途中出場の関口訓充が体ごと押し込む執念のゴールを決めた。試合後、先発を外れたことに強い悔しさを露わにした背番号7の今季2点目でセレッソが試合を決めたかに思われたが、90分+3分、金沢の右サイドからのクロスに水永翔馬にヘッドで合わされ1点を返された。
 会場の空気が一変する豪快な一撃を受けたセレッソだが、この嫌な雰囲気を杉本が打ち消す。90分+5分、山下達也のロングボールに抜け出すと、飛び出してきたGK、追いすがるDFをかわして冷静にゴール。一目散にアウェイゴール裏に駆け寄ると、詰めかけた多くのセレッソサポーターに歓喜の瞬間を届けた。

「ここで本当に気持ちが落ちたら、終わると思う。絶対にそれだけはダメ」と前節の試合後に強い口調で話すなど、強い意気込みで今節に臨んだ杉本の3得点に絡む活躍も含め、決めるべきところでしっかり決め切ったセレッソは攻撃陣の勝負強さが光った一方、守備には課題も残った。ただ引くだけではなく、DFラインの押し上げも含め、「よりチームとしてボールを奪いに行く」(大熊清監督)積極的な守備も今節は目指したが、相手に簡単にボールを縦に付けられるなど、ボールを奪いにいく守備がハマらず、隙を見せる時間帯もあった。ここから天皇杯の戦いを含めてJ2リーグ戦は3週間中断する。「守備の連係をよりやっていかないといけない」と山口蛍も話すなど、守備のブラッシュアップは求めていきたい。

 ただし、そういった課題も残しつつ、前節の敗戦を払拭する勝利を掴んだことは、リーグ戦の残り12試合に向けて非常に大きな意味を持つ。「前節が終わった後も、誰一人、下を向いている選手はいなかった。もう一度、勝ちに行く姿勢をチーム全体で示したい」(田中)という意気込みを結果で示したセレッソは、今節引き分けに終わった松本との勝点差を3に縮めた。ただし、6位・京都サンガF.C.との勝点差も3。2~6位までの勝点差が6という大混戦のなか、中断明けは自動昇格争いを勝ち抜くしびれる戦いが待っている。

文・小田尚史