8月28日(日)第96回天皇杯1回戦
セレッソ大阪 10-0 アルヴェリオ高松 (19:04KICK OFF/金鳥スタ/3,037人)
試合写真・コメントなど
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 2016明治安田生命J2リーグ戦が中断期間に入り、もう1つのタイトルをかけた戦い、第96回天皇杯に臨んだセレッソ大阪。昨年に続き1回戦からの登場となったなか、キンチョウスタジアムにて、四国リーグに所属するアルヴェリオ高松(香川県代表)と対戦した。

 リーグ戦から中6日での試合ということもあって、J2第30節・ツエーゲン金沢戦 にも先発したメンバーが軸となったが、2018FIFAワールドカップロシア アジア最終予選のため一時離脱することになった日本代表MF山口蛍、韓国代表GKキム ジンヒョンに代わって、MFソウザ、GK丹野研太が新たにスターティングメンバーに名を連ねた。また、DF山下達也がこの試合では登録メンバー外となり、DF藤本康太がトップチームでは2014年11月2日のJ1第31節・ヴァンフォーレ甲府戦以来となる先発入りを果たしたほか、大学卒ルーキーFW澤上竜二がこちらもトップチームでは今季初先発で、本職の最前線に入った。

 キックオフ後約40秒で、杉本健勇のヘディングシュートがクロスバーを直撃したところから始まったこの試合。そこからはセレッソが一方的に押し込んでいくが、自陣にほぼ全員が入って対峙してきた高松をなかなかこじ開けられない時間もあったものの、17分に先制点を獲得。ソウザの縦パスに抜け出した澤上が思い切りのいい左足のシュートを放つと、これは惜しくもゴールポストに当たったが、跳ね返ったところを酒本憲幸が押し込んだ。

 このゴールからさらに攻勢を強めたセレッソだが、松田、澤上、山村和也など、次々と決定的なシュートを放つも、高松GK橋口一貴の好セーブにあい、追加点が遠い。それでも39分、再びソウザのパスをきっかけに、酒本の右クロスから山村がヘッドで合わせ、GKが弾いたこぼれ球に詰めたのは、澤上。若きストライカーに、うれしいトップチームでの初ゴールが生まれ、リードを広げる。
 しかし、その直後、この試合最大のピンチが訪れる。高松のコーナーキックから、こぼれ球を相手にフリーでシュートさせてしまう。このピンチを救ったのは、ゲームキャプテンを務めた茂庭照幸。戦前には「アマチュア相手にうまいところを見せようとしたら、足下をすくわれてしまう。不細工でも、泥臭くてもいいから、身体と身体をぶつけあって、相手を吹っ飛ばすくらいの気持ちでやっていきたい」と述べていた闘将が、ギリギリのところで身体を張りシュートブロック。失点を許さなかった。

 窮地をしのぐと、前半終了間際から、桜の9番・杉本のゴールショーが始まる。45分にカウンターからドリブルで持ち込み、個人技で相手をかわして自らシュートを決め切ると、後半に入って51分、64分、74分、76分と、立て続けに加点。「ごっつぁんゴールばっかりだったので、チームメイトに感謝したい」と言いつつも、リーグ戦同様、得点感覚の鋭さを発揮したチームの牽引役の5得点の活躍もあり、試合は一方的な展開になった。
 さらに、57分には丸橋祐介、68分にはソウザも相手ゴールネットを揺らせば、仕上げのゴールを決めたのは86分から途中出場した玉田圭司。90+2分、泥臭く前線からプレスをかけて敵陣ペナルティーエリア内でボールを奪うと、GKを軽やかにかわし、無人のゴールへ流し込んだ。20番の待望の今季初得点で締めくくったセレッソは、守備でも相手を完封。10-0という大勝で、天皇杯1回戦を突破した。

「前(攻撃陣)のシャケさん(酒本憲幸)を中心に切り替えもすごく早かったですし、それは点差が離れてもしっかりやっていたし、後ろ(守備陣)もみんなが声を出してやれていた。そういったように、やりきるということがすごく大事」と試合後に述べたのは、丹野。チームがやるべきことをやれたからこそ、そしてゴールへのひたむきな姿勢を出し切ったからこそ、つかむことのできた勝利だった。

 ただし、「試合内容を見ても、もっともっとできたなと思う」と杉本も言うように、収穫、課題、両面が見えた試合であったことも忘れてはいけない。それでも、「今は勝ちにこだわってやるということが、セレッソにとって非常に大切なこと」と大熊清監督も言うように、目の前の1試合に全力を傾けるとき。それこそがJ1復帰(昇格)、そして天皇杯のタイトル獲得、アジアの舞台へとつながるもの。そのためにも、次の2回戦、京都サンガF.C.との関西ダービー(9/3<日>@金鳥スタ)も、桜色の戦士たちにとって非常に重要な試合になるだろう。

文・前田敏勝