9月18日(日)2016明治安田生命J2リーグ第32節
ギラヴァンツ北九州 0-1 セレッソ大阪 (14:03/本城/2,434人)
試合写真・コメントなど
----------

 記者が午前9時に本城陸上競技場の最寄り駅であるJR折尾駅に着いた時は土砂降りだったが、スタジアムに着く頃には小康状態に。ただし、試合開始と同時に再び本降りとなった。90分を通して強い雨が降りしきる中、行われた一戦。自動昇格へ。J2残留へ。互いの目標達成のため、是が非でも勝点3が欲しい両者の一戦は、試合開始からボールを持つセレッソ大阪、引いてカウンター狙いのギラヴァンツ北九州という構図が鮮明に描かれた。6分、21分と左サイドの丸橋祐介からチャンスを作ったセレッソは、攻撃から守備への切り替えも早く、北九州に攻撃を許さない。前節から大きく修正された上々の立ち上がりとなった。ただし、25分過ぎから様相は変化。27分、北九州に左サイドを破られ、決定機を与えると、序盤は機能していた前からの守備もハマらなくなり、全体の距離が開き出す。すると、攻撃でも停滞感が漂い始める。ボールを受けても、そこから追い越す、飛び出すシーンが少なく、北九州の戻りも早さも相まって、徐々に手詰まり状態となった。

 何か変化が欲しい。大熊清監督の動きは早かった。「前線の迫力やモビリティーを出した上でゴールを目指す」狙いの元、後半開始から山村和也に変えて清原翔平を投入。先週の練習でキレのある動きを見せていた清原を2列目に入れて、ソウザをボランチに落とした。清原は期待に応える動きでチームを活性化。50分過ぎには立て続けにCKからチャンスを作ると、58分には左サイドを飛び出した清原から逆サイドの松田陸へクロス。ゴールまであと一歩に迫った。攻勢を強めるべく、指揮官は全体練習に合流したばかりの杉本健勇投入を決断。先週、段階的に練習の強度を上げていった杉本は、接触プレーの確認を終えた16日の練習後、「痛みはないし、苦しさもない。北九州に行く気持ちしかない。行かない理由がない。チームを助けたい」と溢れる強い想いを吐露していた。それでも、この時点で大熊監督は慎重な姿勢も見せていた。遠征に連れていかずに大阪に残らせ、トレーニングで連戦に備える案も示していた。ただし、「本人の強い気持ちは伝わってくる」と出場へ含みも持たせていた。そして最終的に、監督、チームドクター、杉本の3者による話し合いの末、今節の帯同が決まった。

 0-0と得点が欲しい場面で起用された杉本は、左サイドで起点となり、DFをはがして展開するなど、存在感の大きさを示す。すると、79分だった。高い位置で田中裕介が奪い返したボールが山口蛍へ。山口が間髪入れずに杉本へ縦パスを送ると、杉本は巧みなワンタッチでのターンから前を向き、鮮やかなステップでDFをかわして進入。角度のないところから落ち着いて決めた。一連の淀みない動きは見事で、セレッソサポーターの心を一瞬にして湧き立たせた。ついに奪った先制点。前節同様、2点目を取って締めくくることができればベストだったが、相手に決定機も許すことなく時間を進めていたセレッソに、試合終了間際、肝を冷やす場面が訪れた。90+3分、北九州が左サイドから大きくクロス。右サイドで、フリーで受けた星原健太のクロスを小手川宏基にボレーで合わせられ、セレッソは絶体絶命のピンチを迎えたが、GKキム ジンヒョンがしっかりキャッチ。辛くも同点は免れた。

 公式戦5連勝を飾り、今節、引き分けに終わった2位の松本山雅FCとの勝点差も1としたセレッソだが、守備の連動や引かれた相手に対する攻撃の工夫、試合の終わらせ方など、この試合で出た課題も含めて、「目の前の試合を一戦、一戦しっかり戦っていく」(杉本)と引き締めた。次は中3日で天皇杯3回戦、J1サガン鳥栖との試合が待っている。「天皇杯も上を目指す気持ちでみんないるので、まずは天皇杯に向けて調整していきたい」とは山口。天皇杯の後は中2日でリーグ戦の徳島ヴォルティス戦というアウェイ連戦を、チーム全体で乗り越えていく。

文・小田尚史