12月4日(日)2016 J1昇格プレーオフ決勝
セレッソ大阪 1-0 ファジアーノ岡山 (15:37/金鳥スタ/17,086人)
試合写真・コメントなど
----------

 2年連続でやってきた、J1昇格プレーオフ決勝の舞台。今季から大会規定の変更などもあり、リーグ戦で順位が上のチームのホームゲームとして開催されることになり、J2で4位のセレッソ大阪は、同6位のファジアーノ岡山を、キンチョウスタジアムに迎え撃つことになった。そして、昨シーズンとは違い、桜色のホームユニフォームにて戦うことになった。

 午前中の晴天から一転、試合前から雨が降り出し、緊迫感を漂わせるような雰囲気となったが、それでも、キンチョウスタジアムには、J1復帰を待ち望む多くのセレッソサポーターで超満員に。アウェイの岡山サポーターとあわせて、1万7,086人の大観衆が集まった。試合前から熱い声援が送られ、選手入場時にはコレオグラフィーでスタンドがピンクと紺のセレッソカラーに。決戦を前に、最高の雰囲気が作り上げられた。

 ピッチに選手たちが登場後、ブラジル1部リーグ所属シャペコエンセの飛行機墜落事故により逝去した方々へ哀悼の意を込めて、黙祷が捧げられた。そして、セレッソのイレブンは、その事故により急逝したFWケンペスの、セレッソ時代の背番号9のユニフォームをまとって、故人への追悼の意を表した。セレッソに関わるすべての人たち、そして、ケンペスの想いも力に、桜色の戦士たちは大勝負に挑んだ。

 試合に入ると、序盤からソウザが積極的にミドルシュートを放つなど、セレッソが押し込む展開に。引き分けでも勝ち上がることは決まっていたが、試合前から「勝つことだけを考えている」と柿谷曜一朗も述べていたように、セレッソは自分たちのスタイルでゴールを狙っていく。ただし、岩政大樹を軸に、守備に力を注ぐ岡山を崩しきれない。それでも、柿谷や澤上竜二をはじめ、前線からの全体のハードプレスで、相手にも自由を与えない。前半は結局、膠着したなか、0-0で折り返す。

 雨が強まってきた後半になると、勝たなければいけない岡山が、前半とはうってかわって、攻めの圧力を増してくる。開始4分のうちに2度、セレッソの右サイドを攻め崩してくるが、そこで最後に立ちはだかったのが、桜の守護神、キム ジンヒョン。無失点にこだわる男が、高い集中力を持って相手のシュートを阻み、失点を許さない。

 その踏ん張りが、流れをセレッソに引き寄せる。迎えた52分、コーナーキックのチャンスを得たセレッソ。丸橋祐介が左足でゴール前に送り込んだボールに、ソウザが競り、ゴールエリア付近にボールがこぼれると、密集のなかでいち早く反応したのが、清原翔平。左足でゴールに流し込み、値千金の先制弾を記録した。その瞬間、スタジアムは割れんばかりの大歓声。清原はチームメイトとともに、桜色の熱いサポーターのそばで、喜びを爆発させた。

 1点をリードするなかで、前半から繰り返されていた岡山のロングボールを主体とした攻撃が、さらに顕著になり、セレッソは相手のパワープレーを受ける時間が増えてくる。しかし、柿谷をはじめ、全体で泥臭く立ち向かい、身体をぶつけあい、岡山に決定的な場面を作らせない。76分には山村和也を送り込んで相手の高さに対応すれば、83分に酒本憲幸、90+1分には秋山大地も投入。トレーニングから準備してきた流れで、試合を進めていく。終盤、カウンターからソウザや山口蛍に訪れた決定機をものにはできなかったが、『J1に戻るんだ』という、その強い想い、熱い闘志が、桜色の戦士たちから潰えることはなかった。

 そして、待ちに待ったタイムアップ。J1復帰達成のときがやってきた。勝って決める。それを、ホームで、サポーターとともに実現できた。2014年、15年で味わった悔しさを、ようやく晴らすことができた。柿谷や山口らをはじめ、イレブンは今季最大の目標を、苦しみながらつかんだ想いで、嬉し涙。そして、笑顔が咲き誇った。「雨のなか、本当に多くのファン、サポーターの方に来ていただき、また、セレッソに携わるすべての方々に、感謝を申し上げたい。そういう力が最後になって、やりたいサッカーができたというか、非常に攻守に充実した、セレッソ本来の目指すべきサッカーができた」と大熊清監督も開口一番で述べるように、セレッソにかかわるすべての人の想いをひとつに、「一丸となれた」(酒本)ことが、最後の最後に実を結んだ。艱難辛苦を味わいつつ、様々な糧を得てつかんだ、J1復帰の切符。この2016.12.4から、セレッソの新たな時が動き出す。

文・前田敏勝