10月8日(日)JリーグYBCルヴァンカップ準決勝第2戦
ガンバ大阪 1-2 セレッソ大阪 (14:03/吹田S/31,578人)
試合写真・コメントなど
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 セレッソ大阪にとって、クラブ史上初となるリーグカップ戦決勝進出を懸けた一戦。ガンバ大阪のホーム・市立吹田サッカースタジアムで行われたJリーグYBCルヴァンカップ準決勝第2戦は、試合の中で状況が刻一刻と変化。アウェイゴールの妙もあるホーム&アウェイで雌雄を決するリーグカップ戦の醍醐味にあふれた試合となった。

 開始2分、この試合、FWとして先発した澤上竜二が遠藤保仁へ激しくプレスをかける。続く3分にも澤上は遠藤へプレス。第1戦の反省として、ガンバの司令塔である遠藤から自由に配球させ過ぎたことをセレッソの何人もの選手が口にしていたが、この試合では遠藤のみならず、相手のボールホルダーに対するプレスの強度は第1戦より増した。

 攻撃では、ボールを保持するガンバに対し、セレッソはカウンターからチャンスをうかがう。すると14分、藤春廣輝からボールを奪った水沼宏太が澤上、秋山大地と素早くつなぐと、最後は水沼のクロスに柿谷曜一朗がダイレクトで合わせてシュート。ここはガンバのGK藤ヶ谷陽介に防がれたが、その直後、セレッソに先制点が生まれた。
 ゴール前で秋山のパスに裏を取った柿谷が、相手DFを体でブロックしながら自らの間合いを作ると、左足を振り抜き、ゴールネットを揺らした。試合前、この大阪ダービーに懸ける強い思いを口にしていたエースの一撃により、セレッソが試合の主導権を握ることに成功。その後も、ボールこそガンバに持たれたセレッソだが、前半、ガンバに許した枠内シュートはゼロ。理想的な展開で前半を折り返した。

 それでも、第1戦を2-2で終えたセレッソとすれば、失点すればたちまち状況は一変する。勝利を確実なものにするためにも2点目を取りに行く必要があり、実際、セレッソの選手たちはその姿勢を後半開始から前面に出した。49分、澤上が反転して抜け出し、今野泰幸のファウルを誘うと、これで得たFKから、ソウザが強烈なブレ球ミドルシュートでガンバゴールを脅かす。56分には、中盤での鮮やかなパスワークから、最後は澤上のスルーパスに抜け出した斧澤隼輝が決定機を迎えたが、シュートは枠を捉えることができず。

 すると、60分。セレッソが一瞬の隙を突かれる。遠藤のパスで左サイドの裏を取られると、第1戦でもアシストを許した初瀬亮のクロスを泉澤仁に合わせられ、同点に追いつかれた。この時点で、アウェイゴール数の差により、決勝進出の権利はガンバに移った。1点を取らなければ準決勝敗退となるセレッソは、62分には柿谷、70分には斧澤がシュートを放つもゴールならず。その後、尹晶煥監督は、福満隆貴、リカルド サントスと、第1戦で活躍した2人を相次いで投入。すると、ガンバの長谷川健太監督も動く。78分、泉澤に代えて野田裕喜を入れて3バックにし、このまま1-1で試合を終わらせる狙いを明確にした。 

 81分、松田陸に代わって丸橋祐介が3枚目の交代カードとして入ったセレッソは、3-4-3の攻撃的な布陣で1点を奪いにかかる。ガンバが引いたこともあり、セカンドボールを拾え、波状攻撃を仕掛ける。それでも、87分の田中裕介、90+1分のリカルド サントス、90+3分のソウザと、いずれもシュートは枠を捉えることができない。そのままジリジリと時間が経過し、追い詰められていくセレッソ。ただし、この極限の状況でも選手たちは冷静だった。
 後半アディショナルタイムの目安である90+5分台に突入しかけた最後の時間帯。中盤でボールを拾ったソウザから、福満、田中と丁寧にボールをつなぎ、田中が右サイドの水沼へ展開する。「ここはダイレクトしかない」という判断で上げた水沼の絶妙なクロスに合わせたのは、木本。「点を取らないとダメ、という状況だったので、自分の判断で上がった」と言う木本の好判断が決勝点を呼び込んだ。この瞬間、ニアには柿谷とリカルド サントスが、ファーにはソウザと丸橋がおり、まさに全員の勝利への執念が乗り移った木本のヘディングが、ガンバゴールに突き刺さった。

 準決勝敗退の瀬戸際まで追い込まれた状況から飛び出した起死回生の一撃に、セレッソのゴール裏は沸騰。歓喜に包まれた。ゴールした木本とアシストした水沼が抱き合い、そこに重なるように、ベンチからも一斉に選手が駆け寄り、あっという間に祝福の輪が広がった。この直後、試合は終了。決勝点の瞬間を後方から見守ったマテイ ヨニッチも「本当に信じられなかった。最後の最後でああいう形で決めて本当に興奮した」と振り返る劇的な展開で、セレッソがクラブ史上初となるリーグカップ戦決勝進出を果たした。 

 11月4日、決勝の相手は川崎フロンターレに決まった。グループステージからチーム一丸の12戦負けなしで駆け抜けてきた今年のルヴァンカップ。その頂点に立つまで、そして無冠の歴史に終止符を打つまで、あと1勝に迫った。 

文・小田尚史