6月6日(水)第98回天皇杯 2回戦
セレッソ大阪 1-0 テゲバジャーロ宮崎 (19:01/金鳥スタ/2,565人)
試合写真・コメントなど
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 第98回天皇杯2回戦。宮崎県代表のテゲバジャーロ宮崎をホームのキンチョウスタジアムに迎えたセレッソ大阪は、直近の公式戦、J1第15節・サンフレッチェ広島戦 から先発5人を変更。中でも注目されたのが、FIFAワールドカップロシアを戦う日本代表・山口蛍が抜けたボランチ。天皇杯2回戦に向けた紅白戦や練習試合では、オスマルを軸にソウザと木本恭生がプレーしたが、この日のピッチに立ったのはソウザだった。
 一方の宮崎も、直近の公式戦、2日に行われたJFL 1st第11節のFCマルヤス岡崎戦から先発7人を変更。「元気な選手で戦っていこう」(石﨑信弘監督)と、コンディションを重視した布陣となった。

 序盤、積極的な入りを見せたのは宮崎。[3-5-2]を基本システムに、守備では前線からしっかりとプレスをかけ、奪ったボールは素早く前に運ぶ。サイドで高い位置を取ったウィングバックのクロスからは得点の匂いも感じさせた。
 それでも、セレッソも慌てずボールを握り返すと、16分、オスマルのふわりとしたパスに、前線へ飛び出した福満隆貴がヘディングで合わせ、ポストに当たった跳ね返りを柿谷曜一朗が押し込んでネットを揺らす。しかし、これは福満がオフサイドの判定でノーゴール。その後、宮崎のサイド攻撃や裏を狙ったシンプルな攻撃にヒヤリとする場面もあったセレッソだが、25分過ぎからは怒とうの攻撃を展開する。

 25分、丸橋祐介のクロスをGKが弾いたボールにオスマルが強烈なシュートを放つと、その後も高木俊幸が起点となり、逆サイドから福満が飛び込む形でチャンスを作る。すると、この押せ押せムードの時間帯に、セレッソが先制に成功した。

 31分、スローインの流れから、杉本健勇の落としを受けた柿谷が右サイドのスペースをドリブルで持ち運んで前へ進むと、カバーに来たDFに囲まれながらも余裕を持ってGKも届かない逆サイドの高木へ浮き球のパス。柔らかな、メッセージがこもったパスを受けた高木が冷静にゴールへ押し込み、先制点を奪った。
 40分にもソウザが柿谷とのワンツーでゴール前へ進入し、思い切りよくシュートを放つなど、セレッソ優勢のまま前半は終了した。

 後半も、立ち上がりこそ宮崎が連続してCKを得るも、主導権はセレッソが握ったまま。64分、ソウザのミドルシュートがポストを叩くと、65分には杉本の際どいコースに飛んだシュートをGKが好セーブ。66分にも、CKの2次攻撃から決定機。丸橋が右足で上げたクロスにゴール前で残っていたマテイ ヨニッチがシュートを合わせたが、GKが弾いたボールがクロスバーに当たり、惜しくもゴールならず。

 2点目のチャンスを逃したセレッソと、GK村尾龍矢を中心に体を張り、セレッソに追加点を許さなかった宮崎。すると、ここから流れは宮崎に傾き始める。
 68分に途中出場したフィリピーニョに起点を作られ、DFラインの裏を狙ったパスやサイドからのクロスでゴールに迫られたセレッソだが、マテイ ヨニッチが懸命に跳ね返せば、丹野研太も冷静に対処する。77分には、左サイドからのクロスをDFがクリアしたこぼれ球を拾われ、ピンチを迎えるも、相手のシュートはDFが体を張ってブロックした。84分、フィリピーニョにワンツーから左サイド深くまで進入され、この試合最も決定的な形に持ち込まれたが、角度のないところから放たれたフィリピーニョのシュートは丹野が防いだ。

 後半の押し込んだ時間帯に2点目を取れなかったことで、最後は宮崎の反撃に冷や汗をかくことになったセレッソ。それでも、「思ったような展開にならなくても、我慢することが大事」と試合前に話していたのは丹野だったが、雨でスリッピーなピッチコンディションで事故的な失点も起こり得た中、守備陣は最後まで集中力を保ち、無失点を達成した。
 試合後、「(試合間隔が空いたことで)モチベーションを保つのが難しく、厳しい試合になると思っていた」と吐露したのは尹晶煥監督だが、「試合結果を持ち帰ることができて、満足したい。また次の挑戦ができる舞台を作れた」と安堵の表情も浮かべた。選手たちも試合内容に納得とはいかないものの、「次に進めたという結果が大事」(丹野)と、3回戦進出という結果に胸を撫で下ろした。

 最後に、敗れた宮崎だが、守備時は5枚で守り、攻撃に出た際は両サイドのウィングバックが高い位置を取る、いわゆる可変システムを操り、運動量も最後まで落ちずにセレッソを苦しめた。
「技術、戦術で足りないところを気持ちで頑張った結果が、0-1で終われたんじゃないかと思います」と敗戦の弁を述べた石﨑監督だが、攻守に統率の取れたその内容に、表情には一定の満足感も見られた。
 試合後は両チームのサポーターが互いにエールを送り合う、天皇杯らしい光景も見られた。今後の宮崎のJFLでの健闘を祈りたい。

文・小田尚史