11月10日(土)2018明治安田生命J1リーグ 第32節
セレッソ大阪 2-1 川崎フロンターレ (14:03/ヤンマー/26,600人)
試合写真・コメントなど
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 シーズンも大詰めを迎えたJ1第32節。ホームのヤンマースタジアム長居に川崎フロンターレを迎えたセレッソ大阪は、6日に行われた、台風の影響により延期となっていた第28節・名古屋グランパス戦から先発1人を変更。第29節・ガンバ大阪戦の試合中に左ハムストリングを痛めてしばらく戦線離脱していた松田陸が復帰を果たした。また、試合前のアップ中に高木俊幸にアクシデントが発生。急きょ、田中亜土夢が先発に名を連ねた。

 勝てば地力でリーグ優勝が決まる川崎フロンターレ。試合前から大勢のサポーターがアウェイゴール裏に詰めかけ、異様な雰囲気の中で始まった一戦は、序盤、セレッソが川崎Fに押し込まれる展開が続く。それでも、4分の中村憲剛のミドルシュートや10分の阿部浩之のシュートはGKキム ジンヒョンがしっかり弾き、ゴールを割らせない。ポゼッションこそ川崎Fに譲るも、セレッソもこの展開は想定内。4-4-2の陣形をしっかり整え、前線からの守備も含めたコンパクトな形を維持し、川崎Fに決定機は与えない。

 すると、前半終了間際、セレッソが立て続けにチャンスを作る。40分、スローインを受けた山口蛍のクロスに柿谷曜一朗が頭から飛び込むが、わずかに合わず。44分には、CKの流れからソウザが強烈なシュートを放つと、GKに弾かれて得たCKから今度はゴール前で杉本健勇がビッグチャンスを迎えたが、シュートはDFに当たってクロスバーを越えた。序盤こそ川崎Fに圧倒されたセレッソだが、前半を終わってみれば、ボール支配率は51%と川崎Fを上回り、チャンスの数でも互角以上の展開に持ち込んだ。

 後半も勢いよく試合に入ったのは川崎Fだが、前半同様、この時間帯をセレッソがしのぐと、55分、歓喜の瞬間が訪れる。GKキム ジンヒョンのスローイングを受けた丸橋祐介が中央の杉本へパス。杉本がダイレクトで左サイドの田中亜土夢へ展開すると、田中亜土夢が溜めを作ってダイレクトで中央へ折り返す。リターンを受けた杉本が、対応に来た谷口彰悟をトラップで外して左足でシュートを放ち、これがゴールネットに突き刺さった。

 前半を失点ゼロでしのぎ、後半、最初に訪れたチャンスを生かして先制する。理想的な試合展開に持ち込んだセレッソは、以降の時間帯もしっかりと守備を固め、川崎Fにシュートらしいシュートを打たせない。決定機も作らせないまま時計の針を進めていったが、勝利目前の90分、ゴール前で水沼宏太のバックパスがズレたところを知念慶に拾われ、持ち込まれると、キム ジンヒョンが足をかけて倒してしまい、川崎FにPKを与えてしまう。これを家長昭博に決められ、川崎Fに同点に追いつかれた。

 プラン通りの試合運びで勝利に迫っていたセレッソにとっては何とも悔やまれる失点となったが、この日のセレッソは、組織的な守備とともに、昨季二冠の原動力ともなった、もう一つの“ユン・セレッソ”の代名詞である“最後まで諦めないメンタル”を発揮。後半アディショナルタイム、水沼から杉本へボールが渡り、杉本が左サイドの福満隆貴へスルーパスを送ると、福満がドリブルで縦に運び、ゴール中央の山村和也へグラウンダーのパス。受けた山村が狙い澄まして放ったシュートがDFに当たってゴールに吸い込まれた。

 試合前、何人もの選手たちが、「自分たちのホームで負けて、川崎Fの優勝を見るわけにはいかない」と話していたが、まさにそういったチームの執念が最後に実を結び、セレッソが劇的な勝利を収めた。もっとも、この試合と同時刻で行われていたサンフレッチェ広島対ベガルタ仙台戦で広島が敗れたことで、川崎Fのリーグ優勝も決定。ヤンマースタジアム長居で優勝シャーレを掲げ、敵地に詰めかけた大勢のサポーターと喜びを分かち合った。昨季に続くJ1リーグ連覇を達成した川崎Fに敬意を表するとともに、セレッソにも、必ずやこの日の川崎Fのような喜びに包まれる瞬間が訪れることを願ってやまない。

文・小田尚史