11月16日(土)2019プレナスなでしこリーグ1部・2部入替戦第2節
AC長野パルセイロ・レディース 1-1 セレッソ大阪堺レディース (13:00KICK OFF/長野U)
試合写真・コメントなど
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「ホッとしています」
なでしこリーグ1部・2部入替戦を終えた岡本三代監督の第一声が、今シーズンの苦闘を感じさせた。監督就任1年目、降格したチームを1部に復帰させることを目標にシーズンをスタートさせたが、道のりは平たんではなかった。
 開幕戦の愛媛FCレディース戦 はホームで逆転負けを喫し、その後もなかなか波に乗れず第5節までは2勝3敗と負けが先行した。「昨シーズン、1部で負けが続いて、メンタル的になかなか浮上できなかった」(岡本監督)のが要因の1つだった。

 それでも次第に調子が上向き始め、夏のなでしこリーグカップ2部優勝 をはさんで、チーム状態は安定、着実に勝点を伸ばした。が、インターバル明けのアウェイ2連戦(第11節 ・愛媛FCレディース戦、第12節 ・ちふれASエルフェン埼玉戦)で痛恨の連敗…なかなか昇格圏内が近づかなかった。

8月、なでしこリーグカップ2部で優勝!チーム状態は安定していったが…

 ケガ人が多くメンバーをやりくりして試合を続けると、チームは終盤に驚異的な追い上げを見せた。ラスト3節(第16~18節)で計12得点をあげて3連勝すると、優勝した愛媛FCレディースに勝点差1の2位に滑り込んだ。そして入替戦の出場権を獲得。相手はなでしこリーグ1部9位のAC長野パルセイロ・レディースだった。

 11月10日、ホームでの第1節 。快晴のJ-GREEN堺S1メインフィールドには、多くのセレッソサポーターが来場してチームを後押しした。
 キックオフから、相手はゴールを目指して猛然と攻め込んできた。体が強く、キックも力強い、もちろんスピードもある。2部で対戦してきた相手とは明らかに違っていた。が、立ち上がり15分をしのぐと、なんとか対応できるようになった。
 前半途中から後半にかけては、セレッソのリズムでボールをつなぎ、相手陣内でプレーできる時間が長くなった。16分には筒井梨香のヘディングシュートがバーを叩き、34分、43分と林穂之香がシュートを放った。後半もチャンスはあったが0-0でタイムアップ。得点はできなかったが、アウェイゴールを与えることなく第2戦に臨むことになった。

 そして迎えた11月16日の第2節。長野Uスタジアムの風は冷たかったが、アウェイ側スタンドには熱いセレッソサポーターが陣取り、声援を送った。「ホームでアウェイゴールを取られていないので、1-1、2-2ならかなり有利な状況になるということを理解させた。相手に点を取られても追いつけばいいということで、気持ち的な余裕は選手たちにあったと思う」と岡本三代監督。その言葉どおり、試合前の選手たちに過度な緊張は見られなかった。

 しかし、思いがけないアクシデントがチームを襲う。キックオフ直後、ゴール前の競り合いでDF筒井梨香が負傷。松本奈己が急きょピッチに送り込まれた。「すごく緊張したが、周りの先輩に声をかけてもらい、落ち着いてプレーできた」と話した16歳のDFが、第1節よりさらにパワーアップした相手の攻撃を冷静かつ的確なプレーで封じ込めた。

 相手の猛攻を必死のディフェンスでしのぎ続けたが、前半のアディショナルタイムに均衡が崩れてしまう。相手スローインから一瞬のスキを突かれる形で失点を喫した。リードを許して前半が終了した。

「メッセージを込めた交代だった」と岡本監督は、後半のスタートからFW百濃実結香を起用。前半、献身的なディフェンスを見せていた右サイドMFの古澤留衣に代わって、スピードあるドリブルを武器とする百濃の起用=1点を取りに行く、という明確なメッセージだった。
 狙いは72分に結実する。相手DFに付かれながらも百濃がサイドを深くえぐり、マイナスのクロス。走り込んだ林穂之香(写真中央、背番号10)がねじ込むようにシュートして、1点をもぎ取った。

林穂之香選手の貴重なアウェイゴールに喜ぶ選手たち

 1-1となり、相手の攻撃はさらに強まったが、慌てずマイボールにして何度もセットプレーを得て優位に試合を進めた。決定的なピンチには、GK石田心菜がスーパーセーブを連発。神がかったプレーを見せ続けた。落ち着いてボールをキープし続け、試合終了のホイッスルを聞いた。2試合ともに引き分けだったが、アウェイゴール・ルールにより、セレッソ大阪堺レディースの1部昇格が決まった。

「押されている時間が長かったので、しっかり耐えて。でもチャンスは来ると思っていたので、そこをしっかり仕留められるかということを考えながらやっていた」と振り返った林は、言葉通りに仕留めて見せた。10月26日のリーグ最終節で左足首を負傷し、一時は入替戦出場が微妙な状態であったキャプテンが、その役割をまっとうした。

 そして、入替戦を含めたシーズン終盤を支えた若い選手たちも貴重な経験を積んだ。小山史乃観(14歳)、浜野まいか(15歳)、北原朱夏(15歳)、松本奈己(16歳)、百濃実結香(17歳)らの成長は頼もしく、育成型クラブとしての面目躍如と言えた。
 どちらかというと、しんどい出来事が多かった2019年。最後に「1部復帰」という最上の結果を得たことはもちろん、経験した苦しい事々さえもこれからのセレッソ大阪堺レディース、そしてクラブにとって、大きな糧となるだろう。

文・横井素子