4月23日(土)2016明治安田生命J2リーグ第9節
北海道コンサドーレ札幌 - セレッソ大阪 (13:00KICK OFF/札幌ド)
試合写真・コメントなど チケット
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 前節のギラヴァンツ北九州戦 、セレッソ大阪は今季初めて先制点を奪われ、その後は攻めども攻めども人数をかけて守備を固める相手を崩し切れない。今季初の敗戦も覚悟し始めた後半アディショナルタイム。90+2分に待望の瞬間は訪れた。途中出場で流れを引き寄せた関口訓充が左足で放ったクロスに飛び込んだのは、その関口へボールを展開したソウザ。「あれだけ組み立てながら、作りながら、最後はあそこに入ってくる。それは個人の感覚とか勇気」。試合後、大熊清監督も賛辞を惜しまなかった背番号6の攻撃参加に北九州守備陣もマークに付き切れず、右足で合わせたシュートがゴールネットに吸い込まれ、セレッソは同点に追い付いた。
 敗色濃厚から土壇場で得た勝点1。最後はソウザの「勇気と判断力」が決め手となったが、「途中から入った選手もどうにかしようと気持ちを集約し、また本当に多くのサポーターの声援があった。そういう気持ちの集約があの1点を生んだ」と大熊監督も試合後に振り返ったように、選手、サポーター、スタジアムが一体となって奪った得点でもあった。
 
 殊勲の同点アシストを決めた関口は4月20日の練習後、北九州戦での自身のプレーについて、「最後のシュートを決めていれば勝てたので悔いは残るけど、ボールを出して動くという基本的なことを繰り返すことで、相手にとって嫌なジャブになると思った。同点の場面は、それまで少し単調にクロスを上げていたので、どこかで切れ込むなりえぐるなり、変化を加えたいと考えていた。得点につながって良かった」と振り返った。
 関口は今週の紅白戦でも途中からAチームに入ると、松田陸と息の合ったパス交換でリカルド サントスの得点をおぜん立てするなど、チームの攻撃を活性化。「帰属意識や結束力、チームをグッとまとめる力がある。気持ちでもプレーでも(味方を)つなげる力がある。それを継続して出せる、チームにとって貴重な選手」。いかなる時も気持ちを出してプレーし続ける彼に、指揮官も高い評価を与えた。

 今節の相手は、北海道コンサドーレ札幌。1位(セレッソ)と4位(札幌)の上位対決であり、J1自動昇格を目指すチーム同士の一戦は、真っ向勝負の気配が漂う。今季はともに手堅い試合運びで勝利を重ねているため、先制点の持つ意味合いも大きい。セレッソは、ミスの目立った前節の試合の入りから改善が求められる。攻撃では、ボランチのソウザや山村和也からサイドに展開する形は作れているだけに、両サイドバックからのクロスや中で合わせる選手の入り方に工夫が欲しい。システム的にかみ合わないマッチアップとなる今節は、サイドでの攻防も試合の1つの焦点となる。

 J1自動昇格を争うライバル対決は、選手それぞれを見ても見どころが満載。2011年、セレッソから完全移籍を経て札幌でプレーした山下達也は、この年のJ2リーグ戦37試合に出場して札幌のJ1昇格に貢献した。「札幌には感謝の気持ちしかない。対戦するのは楽しみだし、しっかりとプレーしたい」。古巣戦に挑む心境を山下はそう話した。また現在、札幌のゴールマウスを守るのは、セレッソ大阪U-18所属の2012年を含めて3年間、セレッソに在籍していたク ソンユン。弟分との対戦を前にキム ジンヒョンは、「いつもと変わらずプレーすることだけを考えているけど、負けたくない気持ちは当然ある」と語る。 
 そして、今季からともにキャプテンに就任した柿谷曜一朗と札幌の宮澤裕樹は同学年。年代別代表では2トップも組んだこともある。「裕樹のことは昔から知っているし、今はボランチをやっているけど、高校や(年代別)代表ではFWもやっていた。点も取れるし、サッカーがうまい」と柿谷。チームを引っ張る若きキャプテン2人のプレーにも、今節は注目したい。

 また、ベンチメンバーも豪華な札幌。元日本代表の小野伸二や稲本潤一は出場すれば、チームやスタジアムの雰囲気を一変させる力を持っている。セレッソ・玉田圭司も含めたドイツワールドカップ戦士の共演も、この試合の見どころの1つとなる。

 今節、セレッソは引き分け以上でクラブ新記録となる開幕9戦負けなしを達成する。ちなみに、今季と同じく、J2で開幕8戦負けなし(7勝1分)と好スタートを切った2009年も、9試合目がアウェイでの札幌戦だった。当時は香川真司(ドルトムント)の技巧が詰まったドリブル突破からのゴールも虚しく、セレッソは1-4で札幌に敗れた。だが、勝負強さも増している今季、クラブ新記録を達成して首位をキープするとともに、京都サンガF.C.戦(4/29@金鳥スタ)、松本山雅FC戦(5/3@松本)と続くゴールデンウィークでの戦いに向けて勢いを加速させたい。

文・小田尚史