7月31日(日)2016明治安田生命J2リーグ第26節
京都サンガF.C. - セレッソ大阪 (18:00KICK OFF/西京極)
試合写真・コメントなど チケット
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「チーム力で差を出さなければいけない時期。チーム力とかクラブ力とか目標意識とか、そういうものが全部出る時期。選手層も含めて、チーム力、クラブ力が問われているし、個人の意識も問われてくる。だからこそ、一戦一戦、後先考えずにやらなければいけない」(大熊清監督)という強い決意で臨んだ7月の連戦だが、セレッソ大阪は、ホームで迎えた第24節・FC町田ゼルビア戦に続き、前節の第25節・カマタマーレ讃岐戦も敵地で敗戦。まさかの連敗を喫した。

 1試合消化が少ない首位北海道コンサドーレ札幌との勝点差は6に開き、4位ファジアーノ岡山との勝点差も4に縮まった。「J2優勝J1昇格」を目標に掲げてスタートした今季。首位との勝点差をこれ以上離れさると、優勝への道は険しさを増す。自動昇格圏に食らい付くか、引き離されるか。今節の京都サンガF.C.との関西ダービーは、セレッソにとって今季の命運をも左右する一戦となる。

 勝利のために、まず立て直しが必要なのが守備。連敗した2試合では、3失点、2失点と失点を重ねており、それも1本のパスで裏を取られるなど、淡泊な形も目立った。「前節もカバーのポジションが悪くて失点につながっている。最近は失点も多いので、しっかりゼロに抑えたい。京都は攻撃に個の能力が高い選手が多いけど、しっかり抑えないといけない」と今節に向けて山下達也も気を引き締め直す。もっとも、これはDFラインの問題だけではない。一人がプレスに行った後の連動、チャレンジ&カバー。今週の紅白戦では、いつも以上に選手間で声をかけ合い、ポジショニングについて確認し合う場面が目立った。組織としての修正が求められる一方、京都にはエスクデロ競飛王や堀米勇輝など、個で局面を打開できる選手も多い。1対1で負けないことも重要だ。今節は丸橋祐介と田中裕介を出場停止で欠く。DFラインに選手の入れ替わりがある中で、「よりコミュニケーションを取りながら戦いたい」(山口)と、いい意味での緊張感を持ちながら試合に臨む。

 一方の攻撃陣は、今週行われた紅白戦では5得点を奪うなど、今節に向けて調子を上げている。杉本健勇と清原翔平が好調を維持する中で、4試合得点から遠ざかっているリカルド サントスの奮起も望まれる。今週の練習では、リカルド サントスと杉本が意見をぶつけ合う場面が何度も見られたが、「伝えるべきことは伝えないといけない。自分の気持ちを伝えることは大事だし、それをやらないと、もう一つ先には行けない。チームが強くなるためには必要なこと」(杉本)、「成功するための話し合いなので、歓迎すべきこと。チームが勝つためには必要なので、当然のことだと思っている」(リカルド サントス)と両選手は話し、それぞれが勝利という目的のために強い気持ちで戦っていることが伝わってきた。また、今節は、26日に獲得が発表されたベサルト アブドゥラヒミにも注目が集まる。「J1昇格のためにベストを尽くす」と語るマケドニア代表の新背番号10は、練習試合や紅白戦でも得点を重ねており、今節、どこかのタイミングで出場があるかも知れない。

 最後に、27日、セレッソの選手寮の秀島弘寮長が肺炎のため、入院先の病院で逝去された。これまで、寮長として選手を管理するだけではなく、心を込めた栄養たっぷりの食事で選手の体の成長を支えたほか、一流の料理人という、サッカー選手と同じ“技術者”としての立場から、何人もの若手選手に心の指導もしてきた“秀爺”。香川真司(ドルトムント)が帰国のたびに真っ先に寮に立ち寄ることからも分かるように、選手からの信頼は厚く、若い選手にとって、その存在はとても大きかった。27日の練習後、山口蛍は、「寮生の中では一番長い期間、寮に入っていたので、すごくお世話になりました。親元を離れて一番キツイ時期に支えてもらったので、すごく感謝しています。しっかりJ1に昇格して、また強いセレッソを見せることができたらいいなと。シーズン後にいい報告ができることが一番だと思いますし、そうできるように頑張ります」と気丈に話した。

 3連敗阻止へ、前回ホームで負けた借りを返すべく、そして、ここまでセレッソに多大な貢献をされてきた故秀島寮長のためにも──。今節、セレッソは敵地で持てる力を全て発揮し、流れを変える勝点3を必ずや掴み取る。

文・小田尚史