2017年11月4日、埼玉スタジアム2002。スタジアムの日の出写真 を道中で確認したのが、この日最初の感動だった。スタジアムに到着し、スタンドに上がる。上空に少し雲はあったが、暖かな陽ざしが降り注ぐ、気持ちの良い天気だった。

 スタジアムの雰囲気は、どこまでもポジティブ。西川大介さんによる選手紹介が始まった。いつもと変わらないはずなのに、こんなに明るく、頼もしく聞こえるのはなぜだろう。大きなスタジアム、大きなスタンドに心地よく響いていた。そして、選手入場。ゴール裏のコレオグラフィー に目をみはった。白地に鮮やかなピンクのカップ。選手たちにどんなに勇気を与えたことだろう。いい予感しかしない中でキックオフ。

 開始数十秒で、杉本健勇が電光石火の先制ゴールを決めた。本当にたくましくなった。2008年1月、ハナサカクラブが発足して初めてのU-18スペイン遠征で始めて会ったのは中学3年生の健勇だった。体格は今と変わらないほど大きく、「あの選手は本当に15歳か?何を食べたらあんな体になるんだ?」。トレーニングマッチで対戦した、バルセロナのサポーターが目を丸くしていたのを覚えている。技術も高く、早くから将来を嘱望されていたが、結果を出せずに苦しんでいた。2015年にはついに川崎フロンターレへの完全移籍を決断した。そして、J1昇格を逃した2016年シーズンにセレッソへ復帰。


「『お帰り』と言って応援してくれる人もいるので、そういう人たちの気持ちを大事にして頑張らないとアカンと思う」(2016年1月のインタビュー )。批判覚悟での帰還だったと話していた。

 以来、黙々とプレーを続けた。ケガの痛みに耐えたことも、結果を出せなかったときもあった。「自分のことを批判されても、それは本気で応援してくれているから」と、厳しい言葉にも、真正面から向き合った。心の部分がしっかりしたことで、今季はパフォーマンスが飛躍的に安定した。ルヴァンカップ決勝での先制ゴールは、チームを勝利に導くエースストライカーの証だった。

 早い時間での先制に、川崎Fの攻勢は強まった。ポゼッションされ、自陣でのディフェンスの時間が増えた。ひたすらに守る。全員が高い集中力を持って相手と対峙することで、ほころびはほとんど見られなかった。むしろ攻められるほどにブロックはさらに堅固に、動きは緻密になっていくようだった。終盤、FW柿谷曜一朗に代えて山村和也を投入。5バックにしてさらに守りを固めた。尹晶煥監督らしい、リアリストに徹した采配だった。
初めてのタイトル~みんなのルヴァンカップ②につづく 

文・横井素子


◆横井素子 プロフィール
奈良県奈良市生まれ。広告代理店勤務のあと、フリーランスの編集・ライターとしてセレッソ大阪の広報ツールの制作などに携わる。
1999~2000、2008~2011年はセレッソ大阪トップチーム広報担当、現在はセレッソ大阪堺レディース広報担当、セレッソ大阪公式ファンサイト編集責任者を務める。