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第8回 走っても、走っても、追いつかないもどかしさ

「あのころは苦しかったですね」。2013年のチャレンジリーグ昇格当時を振り返って、監督(当時)の竹花友也はしみじみと話した。「試合には勝てないですし、でも選手たちはいろんなことを我慢して、厳しいトレーニングを続けていました。とにかく走って、走って……というのを続けさせていましたけど、選手たちは『本当にこれが正解なのか』と多分思っていたでしょうね。それは自分もそうでした。でも、そこはブレずにやるしかないとやり続けました。普通、なかなか結果が出なかったら、『なんでこんなに走っているのに全然勝てないの?』って、思うでしょう。僕らも不安な思いはあったので、選手にはもっとあったはずです。でも、それが表に出ることはなかった。選手は崩れなかった。文句を言わずに1年間やりましたが、結果が出ないのは苦しかったです」(竹花)

 最後まで走りきる力をつけるために、シーズン前に走り込んだ。シーズン中も、週に1度はフィジカルトレーニングを課した。が、体格やフィジカルの差は大きく、短期間で埋められるものではなかった。中学生がほとんどなのだから当然だった。まだ筋力もついていないからキックが届かない、体が小さいからジャンプしても競り合いにならず、セットプレーになると失点を覚悟しなければならなかった。テクニックと戦術はあっても、ピッチ上で表現しきれないもどかしさに、毎試合悔し涙を流した。大人の選手の経験やしたたかさに圧倒される試合も多かった。

2013チャレンジリーグホーム開幕戦の懐かしの1枚。
当時トップチームの監督だったレヴィー クルピさんが来場してキックインを行い、激励のあいさつをした。

 
【その後】

 先日、今季はセレッソ大阪堺ガールズの守護神を務める福永絵梨香選手が、「今年チャレンジリーグでプレーしていると、ああ、あの頃と同じだなあ、って思い出します」と、話していました。今はガールズがチャレンジリーグで奮闘中。成長を続けてきたレディースとガールズの歴史を感じる言葉です。

 文・橫井素子