ケガは気持ちで治せる、そう信じていました

 残り試合が1桁になり、J2リーグはいよいよ佳境に入った。
 今回、マイセレがインタビューしたのは、第33節を終えて11得点を上げている杉本健勇。9月3日(土)の天皇杯2回戦 vs京都サンガF.C.で左肋骨骨折、外傷性気胸という重傷(リリース)を負いながら早期に復帰。貴重なゴールを上げ続け、チームを頼もしく引っ張るエースが語る、残り試合に懸ける決意、熱い思いとは…。


■ケガの状態は?
「もう大丈夫です。(京都戦で)ケガをしたときは痛みというより、肺も傷めたので苦しかったですが…でも試合中はプレーできていたので、まさか折れているとは思わなかったんです。一応、病院に行ったほうがいいだろうということで、試合後すぐに行って検査したら『折れている』と。復帰まではだいたい1カ月ぐらいはかかるようなことを言われましたが、『俺は絶対に2週間で戻る、治す』と思っていました。自分の気持ち次第で治せる、って信じていましたから、真剣に。気持ちっすよ、気持ち(笑)。
 痛みが早くに引いてやれる状況だったので、(9月18日・北九州戦の前に)自分の意見を言わせてもらいました」

試合後のコメント にもあったように、監督とドクターに1時間ぐらい話をした、というあれですね。自分がどうしても戻ならきゃいけない、と?
「いえ、自分がいないとチームが負けるとかそういう心配は全然なかったです。けど、シンプルに、チームに1日でも早く、1試合でも早く戻りたいというのがありました。その気持ちだけでした」

■その甲斐あって復帰した第32節・北九州戦、第33節・徳島戦とチームは連勝しました。勝ちきれる勝負強さが感じられますが、今のチーム状況をどう見ていますか?
「北九州・徳島と下位で苦しんでいるチームと当たって、自分たちがボールを持つ時間が長い試合でした。けど、そこで1点ずつしか取れなかった。北九州戦も徳島戦も、残り10分ぐらいで最後の最後に点が取れたという感じの苦しい試合でした。それをモノにできたというのは評価すべきです。でも、チームとしてどうやって試合を進めるのか、もっと点を取るためにどうするのか、ということにもっとフォーカスして考えていかないといけないと思っています」

■苦しみながら勝ったこの2試合を通して、チームとしてよくなってきたと実感する部分は?
「うーん…1点取った後も危ないシーンというのはありましたし、相手にチャンスもありました。そのなかで、(キム)ジンヒョンを含めた後ろの選手がしっかりと集中して、失点しないで守りきったというところはいいことだと思います。でも、後ろだけではなくて前からどう追っていくのか、どうボールを取っていくのかという組織で見れば、まだまだ改善していく部分はあると思っています。ただ、もう残り9試合、やることはなにも変わらないですし、戦い方を変えるつもりもないです。監督の求めているサッカーを、自分たちがどれくらい表現できるかにかかっていると思います」

■ケガから復帰した北九州戦では、途中出場して決勝点を取りました。どんな気持ちでしたか?
「前半から試合をベンチで見ていて、たぶん難しい試合になる、1点勝負になるなと思っていました。頼むから失点しないでほしいという思いと、ワンチャンスで決めきることが大事やなと。
 自分も試合に帯同させてもらって、出られるかわからない状況でしたけど、思ったよりも早く出してもらえた。残り30分という時間帯でした。ピッチの中に入っても、なんとなくこのままズルズル行きそうな雰囲気があったので、自分が出て絶対この雰囲気を変えないといけない…という思いはありました。それと、ワンチャンスで絶対に決める、その決定力は大事になってくると感じていました」

■その通りの、狙いすましたすばらしいシュートでした。
「(山口)蛍くんから一発でいいパスが来ましたし、自分もいいトラップができて、いい仕掛けもできました。自分だけのゴールじゃなくて、みんなの思いが詰まったゴールですし、あの時間まで相手をかき回してバテさせてくれていたチームメイトがいてこそのゴールです。そういう意味では、すべての人、(大熊清)監督やドクター、チームメイトにも感謝したい気持ちです」

■あの試合では、まだケガの痛みもあったのでは?
「まだ怖さはちょっとありました。でも試合に入れば全然そんなことは忘れていて、ピッチではまったく感じなかったです」

■続く徳島戦は大雨で、難しいコンディションでした。
「雨もすごかったですし、ピッチの状態も水で悪くなっていたので、ボールをつなぐということは少なくなったんですけど、ああいう状況でも自分たちは勝点3を取らないといけないと思っていました。その中でソウザがしっかりPKをもらってくれたのは、チームとしてすごく大きかったです。引き分けや負けだったら、上位とも離されてしまう。僕たちはもう勝ち続けるしかないんです」

■そのPKですが、キッカーを務めました。最初はソウザ選手が準備していたようですが…。
「PKをもらったら自分で、というのが基本なんですけど、あの試合では試合前にPKのキッカーは決まっていなかった。ソウザも自分も残ってPKの練習はしているし、ソウザはPKがうまいので任せていいかなと思っていましたけど、監督から『蹴れ』ということで任せてもらいました。責任を持って蹴らないといけないという思いでした。蹴る前にちょっと変な間(ま)が空いたり、ピッチもビチャビチャした状態だったので、しっかりグラウンダーで蹴ることだけを考えました」

■あの状況で監督からPKのキッカーに指名されるというのは、うれしいものですか?それともプレッシャーを感じるものですか?
「『え、俺?』というのは確かにありましたけど(笑)、任されるのはすごくうれしいことですし、任せてもらった以上、絶対に決めないと、という気持ちでした。自分が決めてチームを勝たせることができたのは自信になります」

■次節はホームで清水と対戦します。どんな試合になると思いますか?
「すごいタフで激しい試合になると思います。ただ、自分自身に特別な意識はないです。上位のチームだから、清水だからというのはありません。残り9試合のうちの1試合だと僕は考えています。お客さんもいつもよりたくさん入ってくれるということも聞いていますし、それが自分たちのパワーになりますし、すごく楽しみな一戦です。自分たちも、サポーターの皆さんもそうだと思います。注目はしてもらっていると思いますが、選手からしたら全部勝たないといけない。北九州・徳島と来て、清水は上位にいるチームですが力の差はないと思いますし、自分たちも苦しんで、やっと勝点を取れている状況だと思うので、あくまでチャレンジャーの気持ちで清水に挑みたいと思います」

■リーグ3試合連続の「健勇ゴール」で勝ってほしい、とサポーターの皆さんも期待しています。
「自分がゴールを決めてチームを勝たせる、それ以上の喜びはないです。北九州戦・徳島戦とチームのみんなが頑張ってくれて、たまたま僕が決めて勝てましたけど、それを喜んでいる暇はありません。清水戦に向けて、しっかり最高の準備をします。もちろん、またゴールを決めたいですが、チームが勝つことが一番です」

Vol.17【後編】につづく

構成・文 横井素子
インタビュー:9月28日