「俺達は共に闘う、漢を見せてくれ」。FC岐阜のサポーター席に掲げられたメッセージだ。一致団結した相手の心意気に加え、水が溜まりボールが走らないピッチコンディション。今節は、セレッソ大阪にとって2つの試練が待ち受けていた。もちろん環境面は両チーム同じではあるが、初めからやるべきことを徹底して試合に臨んだ岐阜が悪条件を最初に味方につけた。セレッソは前節のジェフユナイテッド千葉戦と同様、セカンドボールを拾われ、クロスを受ける展開が続く。相手のCKやFKも増える中、センターバックの山下達也と染谷悠太、GKの丹野研太が懸命のプレーでゴールを割らせなかった。

ボールをつなげない条件下。スコアが動くとすれば、クロスをDFが処理ミスすることや、ミドルシュートをGKがファンブルすること。事故的な要素で決まる匂いは漂っていた。ある意味、我慢比べの様相を呈した中、最初に致命的なミスを犯したのが岐阜だった。66分、丸橋祐介のフィードに反応した岐阜のセンターバックとGKが交錯。ボールはゴールへ転がり、フォルランが押し込んだ。重苦しい雰囲気を打破する先制点はセレッソに入った。
直後、パウロ・アウトゥオリ監督は茂庭照幸を投入。DFラインの前に配置し、中盤を厚くする。82分には、椋原健太のフィードに対する岐阜DFのクリアが後ろに流れたところを拾ったカカウが技ありのループシュートで追加点。この2点目で勝負は決まった。

「相手のミスを生かしたチームが勝つ、という典型的な試合」。試合後のフォルランの言葉がこの試合を的確に表現しているが、呼び込んだのはチームの力だ。前節4失点を喫した守備の反省を受け、今節は球際が課題となる中、「もっと行かないといけない」と前節終了後に言葉を残した山口蛍自身、味方のミスを豊富な運動量でカバーするなど率先してチームメイトに示すと、今季初スタメンの椋原も奮闘。山下は危ない場面に顔を出し続けた。
気持ちの入った岐阜の攻撃を防いだからこそ生まれた2得点。であるがゆえに、試合後、得点したフォルランとカカウの評価を問われた際、アウトゥオリ監督も「今日のようなタフなコンディションで最後まで戦う姿勢を崩さなかった選手たちを心から称えたい」とチーム全体の奮闘ぶりを称賛した。

降りしきる雨にボールが止まるピッチ。ゴラッソ連発でスペクタクルに溢れた前節とは全く違う展開となったが、これもまたフットボール。足場が悪い中でも苦にしないフォルランや山口といった代表クラスの選手たちの技術を堪能する楽しみもあった。両チーム、中盤を省略したサッカーとなり、両ゴール前の質で決着が着いたとも言えるこの試合だが、アウトゥオリ監督は相手チームに対しても「最後まで強い気持ちを見せて、あきらめない姿勢を貫いた。見事だった」と称えた。敗れた岐阜にとっても、今後につながる一戦になったはずだ。そして、セレッソは待望の今季アウェイ初勝利。1つ壁を破り、次節以降のホーム2連戦につなげることができた。

文・小田尚史