3月10日(土)2018明治安田生命J1リーグ 第3節
柏レイソル 1-1 セレッソ大阪 (15:03/三協F柏/11,091人)
試合写真・コメントなど
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 ともに今季はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を戦っているセレッソ大阪と柏レイソルが激突した一戦は、拮抗した力を持つチーム同士、常にピッチで緊張感が漂う白熱した好ゲームとなった。

 試合は思わぬ形で動く。4分、マテイ ヨニッチが自陣ゴール前で柏の選手にパスを渡してしまうと、そのまま伊東純也、クリスティアーノとつながれ、ゴールネットを揺らされてしまった。ただし、ヨニッチ自身、「ミスした後は少し動揺したけど、すぐに自分自身に『やり返さないといけない』と言い聞かせた」と強い気持ちを持つと、チーム全体も慌てることなくゲームを進めていく。

 先制したことでカウンター狙いになった柏に対し、セレッソがボールを握る形で試合は推移。すぐさま反撃に出ると、7分、水沼宏太からDFラインの裏を狙った絶妙なパスが通ると、抜け出した杉本健勇がGK中村航輔の股間を狙うシュートを放ったが、セーブされた。18分にもセレッソに決定機。ソウザのCKをニアで合わせたマテイ ヨニッチがヘディングで枠に飛ばしたが、ゴール手前で惜しくもDFにクリアされた。その後もクリスティアーノに対するリスク管理も含め、セレッソが試合をオーガナイズしていくと、37分にはソウザのパスから背後を取った水沼がGKと1対1となるも、シュートは再び中村に阻まれた。

 ボールは持つが、柏の守備を崩すには至らなかった前半を経て、後半、尹晶煥監督は柿谷曜一朗に代えてヤン ドンヒョンを投入。「ロングボールを使うことによって深く敵陣に入ることができると考えた」と指揮官が交代の意図を語ったように、セレッソは丁寧にパスをつなぐ攻撃に加え、よりクロスの意識も高めて柏DFを押し下げると、セカンドボールを拾って2次攻撃、3次攻撃につなげていく。その攻撃が実ったのが、60分。複数の選手でつないで左サイドへ展開し、丸橋祐介がクロス。DFがクリアしたこぼれ球は伊東に拾われたが、そこからのつなぎのパスをカットしたソウザがそのまま持ち出し、遠目の距離から右足を振り抜く。すると、ブレながらアウト回転がかかったシュートがゴールに突き刺さり、セレッソが同点に追いついた。

「今日のようなスーパーなゴールはなかなか難しい(笑)」。決めた本人も驚くゴラッソでセレッソが試合を振り出しに戻すと、ここから試合はさらにヒートアップ。72分、セレッソが丸橋のCKから杉本のヘディングで柏ゴールを襲えば、73分には柏も伊東の突破からチャンスを作る。互いに勝ち越しゴールを目指した一進一退の展開は、思わぬ形で、一時、中断される。80分、ゴールキックを蹴ろうとしたキム ジンヒョンが山本雄大主審に向かって両手を広げてアピール。その後、キム ジンヒョンとコミュニケーションを取った主審が柏ベンチに事情を伝え、キャプテンの大谷秀和が柏のゴール裏をなだめにいく、Jリーグでは珍しい光景が繰り広げられた。試合後のキム ジンヒョンは、「(柏サポーターが)いろいろと(GKを)集中させないようにやってくる熱いサポーターだということは分かっている。それでも、それとは別の、自分としては許せないこと(があった)」とだけ冷静に話し、「すぐにプレーに集中した」と振り返った。

 一時、スタジアムは騒然となるも、試合の熱気は冷めることなく、互いに勝利を目指す。試合終了間際には、丸橋のクロスに杉本がヘディング。決定的な場面だったがGKに阻まれ、こぼれ球に反応した田中亜土夢のシュートも枠を外れて、試合は終了。今季のリーグ戦、初勝利を目指したセレッソとしては、試合の流れを考えると逆転まで持っていきたかったことは確かだが、「最後まで走れた意味のある引き分け」と主将の山口蛍も総括するなど、第2節・札幌戦で課題として残った“球際で戦う姿勢”や“最後まで走り切るタフネス”など、「僕らが立ち返るべき原点」(水沼)はしっかりとピッチで示した。「チャンスで決め切る能力は足りなかったが、闘志あふれる姿が戻ってきたように感じる」と尹晶煥監督も前向きに話した価値あるドローをチーム全体で力に変え、中3日でホームで行われるACL MD4のブリーラム戦での必勝を期す。

文・小田尚史