目標はあくまで優勝。
あきらめる意味が僕にはわからない

 残り試合が1桁になり、J2リーグはいよいよ佳境に入った。
 今回、マイセレがインタビューしたのは、第33節を終えて11得点を上げている杉本健勇。9月3日(土)の天皇杯2回戦 vs京都サンガF.C.で左肋骨骨折、外傷性気胸という重傷(リリース)を負いながら早期に復帰。貴重なゴールを上げ続け、チームを頼もしく引っ張るエースが語る、残り試合に懸ける決意、熱い思いとは…。
Vol.17【前編】よりつづく


■先ほど「監督の求めているサッカーを、どれくらい表現できるかにかかっている」と話していましたが、あらためて大熊監督が求めるサッカーとは?
「相手のサッカーにもよるんですけど、この2試合(北九州戦・徳島戦)は相手が引いてきて自分たちがボールを持つ時間が長くなる中で、単調になりすぎないというところ、中へ中へ行くのではなく、サイドに振るとか、自分たちもどんどん動き出しを多くして相手を動かして空いたところを狙う、というのは監督がいつも言っていることです。自分としても足元で受けるばかりではなくて、どんどん抜ける動き、背後を狙う動きを増やさないといけないと思っています。
 あとは、チームとして、ホントに粘り強く、最後の一歩のところ、スライディングをしてでも絶対に相手にやらせない、ということは監督も言っています。これは、残り8試合でできていても、9試合目でできなかったら意味がないんですよね。それで去年もやられてますから…だからもう、ホントに気を抜けない、1人1人が集中して、1秒たりとも気を抜かないこと。そこは監督も求めていることなので、しっかり続けてやっていきたいです」

■天皇杯2回戦・京都戦では、キャプテンマークをつけてプレーしました。
「まさか自分が(キャプテンマークを)巻く時が来るとは想像もしていなかったです。初めてでした。でも、キャプテンの(柿谷)曜一朗くんがケガで、ずっと(キム)ジンヒョンがゲームキャプテンしていましたけど、自分は(キャプテンマークを)巻いてなかったですけど、サポートしたり、キャプテンのような気持ちでやらなアカンと思ってやってきました。ずっとキャプテンマークを巻いている気持ちでプレーしていました。だから、京都戦もそれまでと同じでした。違っていたのは、コイントスをしたことぐらいです(笑)」

■柿谷選手がケガで戦列を離れて、期するものがあったのでは?
「そうですね。ケガをしてしまったことで、チームとして苦しいというのはもちろんですが、それよりも苦しいのは曜一朗くん本人だと思います。その気持ちっていうのは、俺も含めて誰にもわからないなと思うんです。本人が一番歯がゆさを感じている。そのなかでできることをやろうと、曜一朗くんは今もリハビリをして復帰に向けてトレーニングをしています。早く帰ってくることを願っていますけど、いない間はしっかり自分たちが戦って、戦い抜きたいなと思っています」

■柿谷選手から声を掛けられたりということはありますか?
「曜一朗くんもそんなに言葉で引っ張っていくタイプではなくて、背中を見せて、プレーを見せて付いて来させるタイプ。声を掛けてくれることもありますけど、僕の性格をわかってくれていて、そんなに多くは語らないですけど、早く復帰したいと思って、毎試合祈りながら見てくれていると思います。それは曜一朗くんだけじゃなく、ベンチに入っていないほかの選手のそうです。みんなが気持ちを切らさずにやっていると思います。それを続けてやっていきたいです」

■天皇杯3回戦・鳥栖戦では途中出場しました。久しぶりのJ1チームとの戦いでしたが?
「もちろん、個々のクオリティーなどはレベルが高いなと感じました。でも、自分たちがボールを持つ時間もあったし、チャンスは何度も作れていました。負けてからいうのもなんですけど、やっぱり1つのプレーでやられてしまった…そこが大きな差なんでしょうけど、僕はやれる自信しかなかったですし、チームとしてもあの舞台で、ああいう相手とどんどん試合がしたいなと感じさせてもらった対戦でもありました。なおさら早くJ1で勝負したいという気持ちになりました。相手はJ1でレベルが高いからといって負けたら絶対にアカン、と本当に思っていましたし、あの試合を簡単に考えたらアカンと思います。俺は本当に悔しかったんです。優勝を目指していたんで…チームの力になれなかったので悔しいし、自分自身に一番イラついていました。心境的にはもうリーグ戦に切り替えるしかなかったんですけど、気持ちを全部そこにぶつけて、なんとしても絶対にJ1に戻って、鳥栖を倒してやろうと思っています」

■今年の初めにセレッソに復帰したときのインタビュー で、『ファン・サポーターの人たちには、いろいろな思いがあると思います』と言っていました。実際にプレーしてみて、周りの声も変わってきたのではないですか?
「『帰って来てくれてよかった』と言ってもらえたらうれしいですし、そういう声を掛けてくださる方はいます。『ありがとうございます!』と答えていますが、すべてはシーズンが終わって、チームがJ1に上がってからだと思います。
 自分のことを批判されても、それは本気で応援してくれているからで、自分も本気でプレーしていますからぶつかることはあると思います。それは人と人とのことなので、僕は全然悪いことだとは思っていません。そういう方たちがいて、自分はセレッソ大阪でプレーできていますから、本当に感謝の気持ちを持っています」

■そのインタビューで『今年は数字にこだわりたい』とも言っていました。現在11得点と数字もついてきています。
「今、点が取れているからといって全然安心していないですし、毎試合不安ですよ、点が取れるかどうかって。それに打ち勝っていかないと、上は見えてこないです。ただ、チームが勝つなら、自分の点は別にいらないと思っています」

■あらためて、残り試合に向けた意気ごみと目標を…。
「今の目標は、優勝してJ1に上がるということ、残り全試合に勝つ、です」

■優勝じゃないとアカン、と?
「もちろんそうです。だって、勝点的にも行けますし、あきらめる意味が僕にはわからないです。ラスト3試合で勝点10離れているなら現実的に無理ですけど、まだ全然いける。自分も、ほかの選手もみんなそう思っているはずだし、誰もあきらめていないと思います。
 だって、それが今シーズン始まるときの目標だったじゃないですか。もう一度、クラブとしても、サポーターのみなさんも、一番上を目指すっていうことを忘れたくないんです。
 自分はずっとそれを言い続けていますけど、いつの間にか自動昇格(2位以内)が目標になってしまっている部分があるような気がして、北九州戦後のヒーローインタビューで『てっぺんを』と自分から発言させてもらったんです。まだどこが優勝するかわからないし、自分たちが優勝する気でいます。上もそんなに負けることはないし、自分たちも残り全勝するぐらいの気持ちで、やり続けたいと思います」


構成・文 横井素子
インタビュー:9月28日